養豚場ミックス ランドレース。 東京都畜産試験場 研究報告 2004年以前

豚の餌やりは、最も効果的な、子豚の餌やりです(写真とビデオ)。

養豚場ミックス ランドレース

【要約】 近年、6次産業化の推進により、生産者自ら、もしくは地域の加工業者と連携して、加工品を製造・販売する取り組みは増えてきているものの、販売促進や利益の確保など、課題も少なくない。 本稿で紹介する「きたやつハム株式会社」は、長野県佐久穂町に立地し、高品質のベーコン、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品の製造販売を行っている企業である。 前身は地元農協の加工施設で、近年株式会社として独立した。 地元産の豚肉を使った加工・販売の先駆け的存在であり、現在は放牧養豚により自ら原料となる肥育豚の一部を生産している。 本報告は、地域資源を活用した製品の製造と付加価値販売に取り組んでいる事例である。 はじめに 我が国の食品製造業の二極集中は、しばしば指摘されることである。 大手メーカーのナショナルブランドが、幅広い商品を手頃な価格で全国販売し存在感を示している一方で、各地方では、製法や素材にこだわった中小規模の食品加工メーカーが事業展開し、高品質な商品で顧客をしっかりとつかみ、これもまた強い存在感を示している、というのが二極集中の意味であるが、これはハム・ソーセージなどの食肉加工業界で典型的にみられる状況である。 本稿では、二極集中の後者にあたる、長野県佐久穂町の「きたやつハム株式会社」(以下、「きたやつハム」)における食肉加工品の製造・販売に関する事例を取り上げ、放牧養豚や製品に対する質へのこだわりなど、その取り組みと特徴について明らかにする。 1.「きたやつハム」の概要 (1)「きたやつハム」の経営概況 「きたやつハム」は、八ヶ岳の北側山麓に位置する長野県佐久穂町の標高約900メートルの高原に立地し、高品質のベーコン、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品の製造販売を行っている企業である。 資本金1455万円、年間売上高約1億円、従業員約10名という規模の経営である(表1)。 添加物を使わずに自然な製法でアミノ酸を多く含んだ高級な製品を製造しており、顧客からも高い評価を得ている。 なお、「きたやつハム」の代表取締役である渡辺敏氏と、相談役の井出誠氏のほか、数十名の顧客が出資者となっている。 資料:「きたやつハム株式会社」 会社概要より。 (2)恵まれた自然資源・観光資源 佐久穂町は、長野県東部に位置する人口約1万2000人の町である。 特に「きたやつハム」が立地する旧八千穂町は、八ヶ岳のふもとに位置し、自然資源や観光資源に恵まれている。 後述するように、食肉加工施設との関係では、良質な地下水を地下300メートルからくみ上げることができる。 また、佐久穂町のみならず、佐久地方(あるいは東信濃地方)は、軽井沢や野辺山高原など多くの避暑地、スキー場、温泉などを抱えた観光地である。 観光客としてこの地を訪れる人は多く、特に首都圏からの観光客には高級志向の消費者が多く含まれることから、本稿で取り上げる食肉加工業も含む地域の産業振興にとって、条件的に有利であると考えられる。 (3)企業の歴史 「きたやつハム」の創業は、1987年(昭和62年)に遡る。 当時の八千穂村農業協同組合(以下、八千穂農協)の加工施設として設置された。 当時の八千穂農協は、管内に養豚経営のみならず酪農経営や肉牛経営もあり、畜産が主体となっている農協であった。 当時の組合長が、「買われた後に高く売られるなら、自分達で付加価値をしっかりとつけて売ろう」、と提案したことから、その一環として豚肉の加工施設を導入することとなった。 農協で畜産物の加工に取り組んだ所は県内にはなかったが、農協と経済連の連携によりうまく進んだ。 また、当時、八千穂農協管内の養豚経営の技術水準は高く、出荷先の立川市場(東京)での評価も高かったということである。 その後、農協合併のために「八千穂農協きたやつハム」が、「JA南佐久きたやつハム」、そして「JA佐久浅間きたやつハム」と名前を変えていくことになるが、これらの時代には、加工施設で作ったハム、ソーセージなどの製品の販路は、A-Coopなどの農協系統関係のルート、物産展などでの販売、観光地での土産物販売などが主なものであった。 近くに八ヶ岳や軽井沢があることで、販売条件には恵まれていた。 きたやつハム株式会社の渡辺社長 当時は、長野県経済事業農業協同組合連合会(以下、県経済連)の指導の下、農協系統では補助事業を使いながら畜産の団地形成などを進めていた時代であり、県経済連がランドレース系の親豚を供給し、各経営が養豚を行うという形で事業が進んでいた。 平成24年に佐久浅間農業協同組合(以下、JA佐久浅間)から独立して「きたやつハム株式会社」が設立されたが、その設立に当たっては、JA側から現経営陣である渡辺氏と井出氏へ、施設の運営を引き受けてくれないかという打診があった、ということである。 両氏とも「JA佐久浅間きたやつハム」の経営に以前から深く関わっており、「きたやつハム」の経営刷新への意欲も強かった。 他方、JAとしては、補助事業で導入した施設の維持管理が負担となっていた。 結果として、既に償却が済んだ施設・設備などはJAから「きたやつハム」へ譲渡され、償却が終わっていない施設・設備などはJAから借用するという形で、「きたやつハム株式会社」がスタートした(表2)。 現在の加工施設は、27年前に作られた創業当時からの設備を使用し、当時と同じ場所でハム・ソーセージなどの製造を行っている。 資料:「きたやつハム株式会社」 会社概要より。 創業当初、年間売上高は3000万円程であった。 その後、7000万円までのびたものの、今から10年程前には5000万円まで減少した。 その後の経営努力により、JA佐久浅間から独立時にはおよそ9000万円まで回復した。 売上高は徐々に増え、平成25年9月現在ではおよそ1億円となっている。 (4)現在の経営内容 「きたやつハム」の主要な製品は、ベーコン、ハム、ソーセージであり、年間45トン(約1,000頭分)の原料を使ってこれらの製品を製造している。 製法にこだわり、高品質な製品を製造し、品質に見合った価格で販売することを目標としている。 また、渡辺氏は、「イベリコ豚よりおいしい豚肉を作る」という目標を持っている。 原料にもこだわり、製品の品質を高く維持することに努力しているのが、「きたやつハム」の経営上の特徴である。 別の言い方では、「大手のメーカーではできない、ここ、『きたやつハム』だからできるような製品を作りたい」ということである。 現在の主力商品のベーコン、ハム、ソーセージに加えて、今後、生ハムとサラミの製造・販売にも取り込んでいくとのことであった。 2.こだわりの製品 (1)製品の製造方法などの差別化 高品質の製品を製造するためには、原料や製造方法について独特の取り組みが必要になる。 「きたやつハム」で扱う原料の豚肉は、主に佐久地方の養豚経営が生産したものである。 良い加工製品を作るためには、良い豚を育てることが必要であり、飼養する段階から配慮が求められる。 高品質の豚肉を生産するための手段としては、飼料米の利用もしばしば検討されるが、JA佐久浅間によると、佐久地方はコシヒカリの産地であるため、米生産者が混米を恐れており、飼料米生産の意向は弱いとのことである。 他地域では成功例もある飼料米利用による差別化は、この地方では難しいと考えられる。 飼料による差別化が難しいのであれば、飼養方法による差別化が考えられる。 渡辺氏によると、養豚で飼料効率が良いと言われる体重より大きめの、150キログラム程度に育てた豚の肉は、適度に水分量が減って、加工しても美味しい製品に仕上がるので目標としているとのことである。 飼料や飼養方法も重要な要素であるが、より直接的には、やはり製造技術にこだわった差別化の有効性は大きい。 「きたやつハム」では、現在も創業当時と変わらない製造法にこだわり、そのことによって他の企業ではできないような高品質の製品を製造している。 ロースハムなどは湿塩法(塩水に10日間漬け込んで熟成させる方法)により製造している。 ベーコンでは乾塩法(肉に直接、塩を擦り込む方法)によって製造している。 製造の効率性を考えると日数がかかり、原料の重量に対する製品の重量でみた「歩留まり」という点からも敬遠されがちな製造方法であるが、この製造方法によりアミノ酸が増加し、独特の味と香りが出てくると言う。 「きたやつハム」でこの方法を採用しているのは、製品の品質をより重視するという経営判断によるものである。 その他にも、水は八ヶ岳の伏流水を地下300メートルからくみ上げて使用し、塩は5種類の塩をブレンドして使うなど、製造方法や原料には相当のこだわりがある。 このように、「きたやつハム」は品質重視の製造方法を採用しており、結果として、平成24年、25年と連続でドイツ農業協会(DLG)の加工食品品質競技会において金賞を受賞するなど、専門家から高い評価を得ている。 熟成中のロースハム (2)販売方法 「きたやつハム」の製品はこだわりの商品であり、価格も一般の商品に比べると高めであることから、一般の商品の販売ルートとは一線を画した販売ルートによって販売されている。 販売ルートの1つは、地元のスーパーである株式会社ツルヤ(以下、ツルヤ)での販売である。 小諸市に本社を置く地元のスーパーであるが、軽井沢をはじめとする県内の観光地にも店舗を持っていることから、首都圏などからの観光客への販売ルートにもなっている。 軽井沢などの高級リゾート地を訪れる食通や食にこだわりのある人たちへアクセスし、そこから口コミで情報が伝わることの効果は大きいと考えられる。 ツルヤを経由しての販売は、「きたやつハム」全体の約3割を占めており、最大の販売ルートとなっている。 また、地元の八ヶ岳野辺山高原の乳業メーカーである株式会社ヤツレン(以下、ヤツレン)やJA佐久浅間などを通じての販売もある。 ヤツレンは観光地の国道沿いに売店を持っていることから、そこでの観光客向け販売が中心となっている。 その他に、郵便局を通じての販売や、ウェブサイトを利用しての通信販売も行っている。 地方の食肉加工業者には、高い技術を持ち、高品質の商品を生産できる能力がありながらも、その商品に見合った価格設定がなされるような販売ルートなりプロモーションの方法を見つけることができないため、発展できずにいる所も多いが、「きたやつハム」では、品質に見合った価格の設定と、高価格でも買っていくお客様がいるような販売ルートの確立、クチコミなどを利用してのプロモーション、という形で、各種の手段を巧みに組み合わせて効果的なマーケティングを行っている。 これらを活用し、顧客に受け入れられる組み合わせを検討し、戦略的に 販売強化を図ろうとする考え方がマーケティングミックス。 加工施設内 (3)今後の製造・販売の方針 「きたやつハム」では今後、生ハムやサラミの生産・販売などに取り組む計画である。 そのため、6次産業化推進支援事業を利用して、熟成庫と販売のための直売所を整備したところである。 今後の製品製造の方向性については、需要動向を考えて、生ハム、サラミの生産割合を全体の6割程度にしたいと考えている。 生ハムやサラミは熟成期間が長いが賞味期間も長いため、注文を受けてからカットできる。 そのため、真空にしてストックできる保冷庫を導入している。 販路としては、都心からの観光客にしっかりアピールし、チャンスがあれば首都圏に向けて情報発信するほか、レストランなどのプロの料理人向けの販売も検討している。 観光客に依存すると需要が季節的に変動することになるので、プロ向けの需要と組み合わせることで、季節的な変動を押さえていきたいとの意向であった。 また、後述する放牧養豚の取り組みも徐々に拡大する意思があるようであった。 放牧養豚の取り組みは原料にもこだわった製品づくりをしていることをシンボリックに伝える手段として効果的であるし、食育的な要素も持ち合わせているので、今後の同社の事業展開に幅と深みを加えるものと考えられる。 3.放牧養豚 (1)放牧養豚の取り組み 冒頭でも触れたように、日本の食品製造業では、ナショナルブランドとローカルブランドが同じ市場内に共存している。 体力では圧倒的な格差のあるナショナルブランドに対抗していくには、差別化戦略をとるのが基本であろう。 その面から「きたやつハム」の取り組みで注目されるのが放牧養豚である。 これまでも加工品の原料は地元産にこだわってきたが、地域の養豚経営が激減したため、原料の入手が困難になっていることから、自ら養豚に取り組みはじめた。 疾病対策などの理由で、舎飼いで極力外界との接触を制限されることが多い養豚であるが、有機農法やアニマルウェルフェアへの関心の高まりから、わが国でも豚を屋外の広いスペースに放って飼養するという放牧養豚がみられるようになってきた。 「きたやつハム」でもより良い原材料の確保のため、放牧養豚が行われている。 「きたやつハム」では、平成24年に5頭、25年は45頭の豚をJA系統のSPF豚ぼ種豚場から導入している。 雌豚を導入したいという希望があるが、実際には雌豚は不足しており、導入できているのは雄(去勢豚)である。 生後3カ月の豚を1頭当たり1万2000円で春先に導入し、6カ月ほど飼養して、初冬にと畜し加工原料とするサイクルで放牧している。 生体で130〜140キログラム、枝肉で80キログラム程度に仕上げるため、通常より1〜3カ月程度長く飼養している。 なお、前述のとおり、渡辺氏は、肉質へのこだわりから最終的に150キログラム程度にまで大きくしたいと考えている。 飼料は、通常の配合飼料を主としており、一部、青米の給与も行っている。 いわゆるエコフィードの利用は現時点では進んでいないが、今後は取り組んでいきたいと考えている。 放牧された豚は、パイプハウスを設置した放牧場の中で、昼夜自由に行動できるようになっている。 面積は1頭当たり30平方メートル以上あり、自由な移動や運動が可能な状態である。 また、現在では自社が設置した放牧場での放牧のみを行っているが、今後は飼養頭数を拡大していきたいと考えている。 近隣には空き豚舎や、耕作放棄地があるので、それらを利用することが可能であると考えられるからである。 現在までのところ、放牧されている豚の育成は順調であり、下痢が1〜2頭見られたものの、井出氏が獣医師であるためすぐに対応できたということである。 生育した放牧豚は、佐久広域食肉流通センターでと畜し、隣接するフレッシュミート佐久平の工場でカット後、部分肉として「きたやつハム」の加工施設に導入し製品へ加工している。 放牧場と放牧されている豚 4.マネジメントのあり方 (1)技術と経営の噛み合ったマネジメント 前述のように、「きたやつハム」の前身の「八千穂農協きたやつハム」の加工施設は、八千穂農協の事業として始まった。 しかし、付加価値をつけるための加工施設の運営と、平等を旨とする協同組合の組織原理は必ずしもフィットしない面もあったようである。 JA佐久浅間管内では、既に養豚経営戸数は減少してしまい、養豚経営がパワーを発揮できにくい状態であることが推察された。 また、農協合併によりJA佐久浅間ができた時点で、食肉加工施設を経営していた農協は八千穂農協のみであったということも、養豚経営のパワーは限定的であったように推察された。 一般論としても、平等主義を組織原理とする農協において、一部の組合員のみが利用する食肉加工施設の運営は困難であったことは容易に想像できる。 戦略的な投資をしようとする場合など、その問題は顕在化しがちである。 そのようなことから、加工部分は系統組織の中での分業の一環として、単協よりは経済連段階が担当するべきという意識が強いのが一般的である。 そのような環境の中で、付加価値形成ための加工施設を運営していくのはなかなか難しいと思われる。 佐久地方のように養豚部門が縮小していく中では、平等主義でしかも安全を重視する組織原理の農協の意思決定と、経営という要素が強く、進取の精神を方針としなければならない加工施設や加工部門はミスマッチしがちである。 保管されている製品 また、ブランド戦略としての面から考えると、以下のような言い方もできるだろう。 JA全体としては、「きたやつハム」というブランドの位置づけは大きなものではないが、「きたやつハム」の加工製造に携わる職員や養豚経営にしてみると、このブランドを維持発展させることは、自らの存在にかかわる大きな問題である。 農協にしてみると、費用対効果が見えにくい部門への投資はやりにくく、組合員の合意を取り付けにくいことも生じてくる。 このような事情から、農協の傘下の加工事業としては制約も大きく、維持管理費の負担などの具体的な問題につながっていった面もあるのではないか。 これらの課題への解決法の1つは株式会社としての独立ということであったとみることが出来よう。 (2)組織原理と意思決定の仕組み 安全を旨とし平等主義を組織原理としている組織では、経営的な視点を導入すると、加工施設・加工部門を費用の発生場所であるコストセンターとしてのみ見てしまいがちである。 またマーケティング戦略も、安全策を取るようになり、他の経営と同じようなものを製造販売する方向へと傾きがちである。 しかし、加工施設・加工部門が独立した場合には、その組織はコストセンターとしてのみ認識されることはあり得ない。 利益を生むのもそのためのコストが発生するのも、自らの加工施設であり、加工部門であるからだ。 経営的に、あるいはマーケティングの視点から見て、部門を独立させることの意義は大きい。 もちろん独立に伴うリスクもある。 しかし、新しいことにチャレンジしなければ埋没してしまう中小メーカーにとって、リスクテイクすることは企業の存続のために避けては通れない道なのである。 現在、「きたやつハム」の代表取締役を務める渡辺氏は、八千穂村の養豚経営のご出身である。 地元の八千穂農協にハム工場が作られることを知って、渡辺氏は本格的なハムづくりを全国食肉学校(群馬県)で学び、新設された「八千穂農協きたやつハム」で働き始めた。 その後、海外も含めて研究しながら技術を高め、平成17年には工場長に就任し、24年のJAからの独立、株式会社化を機に代表取締役に就任している。 農協・JAの一部としての「きたやつハム」と、独立した企業としての「きたやつハム株式会社」の両方の経営に深く関わっているだけに、企業としての経営方針については明快な思いがあることが話の端々からうかがえた。 (3)地域の企業としてのありかた 地方の中小の食肉加工メーカーの場合、地元での商工業者との付き合いや、原料供給している畜産経営との付き合いも事業発展のための条件となっていることが多い。 渡辺氏と井出氏は、地元の商工会との付き合いも深く、地域密着型の商売をする中で、色々と助けてもらっているという。 特に地元のスーパーマーケット「ツルヤ」の会長と20年来の付き合いは大きな効果をもたらしている。 ツルヤの会長に「きたやつハム」の品質を認めてもらい、前述のように販売ルートとして同スーパーを利用させてもらったり、バイヤーのアドバイスなどで経営を支えてもらったりしているという。 地元の企業、JA、商工会などとの付き合いの中で形成されるネットワークが、事業展開にとっても大きな意義をもつことを示している。 「きたやつハム」では、一部の原料豚は放牧により自家で飼育するが、全体としてみると、原料となる豚肉のほとんどを農協系統から購入している。 品質にこだわる「きたやつハム」としては、仕入れ先の生産者まで指定したいという希望を持っている。 特定の養豚経営と'提携して原料を確保したいが、現状ではなかなか難しい状況となっている。 原料調達のチャネルを絞り込み、対象となる生産者を厳しく選別しながら付き合っていくことは、地元の生産者を育てることになると「きたやつハム」の経営陣は考えている。 企業の経営を考えるとともに、地域の生産者との関係性を構築する中での事業展開を考えているものと思われるが、このようなところは企業の社会的責任の議論とも交わるところである。 5.まとめ JA佐久浅間によると、この10年間に佐久地方の養豚経営は激減し、10年前にはJA管内の豚の販売高が9億円近くであったものが、現在は3億円程度にまで落ち込んでいるとのことであった。 原因は、豚サーコウイルスなどの疾病の発生や、飼料価格の高騰、生産者の高齢化といった複合的な要因であり、家族経営では投資をためらう状況になっているためである。 このような状況で養豚業を存続させるためには、生産にかかわる全過程のバリューチェーンを見定め、効果的に付加価値形成を図っていくことが望まれる。 「きたやつハム」は、加工段階での高付加価値化をねらうものであり、他の食肉加工業者とはレベルの違った高品質な製品を作ることでの差別化を志向している。 技術者としても高い技術を持つ渡辺社長と、獣医師でもある井出相談役が経営陣としてリードする「きたやつハム」は、製品の原料調達、製造、販売、品質管理のいずれの面でも隙がなく、地方のハム・ソーセージ製造業者としては理想的な体制をとっていると言えよう。 「きたやつハム」の課題としては、施設の老朽化のほか、一層の事業の進展のために新規の機材導入が必要であったが、これについては、既に6次産業化推進支援事業により熟成庫と直売所の整備が行われている。 ナショナルブランドとは差別化した製品により、一層の経営の拡大と、そのことによる地域の養豚経営への波及効果を期待したい。 (後記) 今回の調査に当たりご協力を賜りました、「きたやつハム株式会社」代表取締役渡辺敏様、同相談役井出誠様、また、佐久地方の畜産業の全般についてご教示いただきましたJA佐久浅間営農指導部畜産センター長山崎秀二様、同畜産課課長阿部昌史様に、厚く御礼申し上げます。

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シリーズ ブランド豚を追う2006年1

養豚場ミックス ランドレース

ブリーディングで色々な種類のぶたの親になるすごいぶたさん。 エサは1回だけでもちゃんと成豚になる上に、成長速度もとても速い。 山林のノーマルハントでピンク色の子ぶたを捕まえると必ずランドレース種になるが、 あまりピンク色の子ぶたが出てこないのでハントで狙うのは地味に負担がかかる。 成長速度が最速の3時間のぶたの一種。 3時間のぶたは複数いるが、安定して入荷できるぶたはランドレースしかいない。 育成頭数を競うイベントではあちこちで引っ張りだこになる。 タイミング次第では、オークションで10000ptとかいうとんでもない高値がつくことも。 デンマーク原産の豚で、「在来種」という意味らしい。 いかにも「豚」っぽい見た目だとか。 とにかく繁殖力&母性が特徴の豚らしく、別の品種のオスと掛け合わせて子豚を産ませることが多いらしい。

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ぶた図鑑

養豚場ミックス ランドレース

国内ではたいへん珍しい放牧豚。 もちろんエサの安全性にこだわっています。 ピンク色の肌は豚が健康である証です。 現在国内の養豚場において豚が放牧されているケースはたいへん珍しく、数える程しかありません。 しかもそのエサの安全性に十分に注意しているところは皆無に等しいといえます。 日本有機農業研究会の元幹事で、現在、有機農業技術会議副代表を務めています。 本田さんは1976年、牛飼いに夢をもち、標津に入植しました。 それ以来、思わぬ苦労に次々ぶつかりながらも乗り越えてきました。 現在はオルターやその価値を理解する消費者団体へ、放牧しているブラックアンガス牛、オガくずを敷いた踏み込み式の広い牛舎でホルスタインの未去勢若齢肥育牛YBB、それに放牧豚と牛肉、豚肉を出荷しています。 私とはおよそ30年前、私の徳島時代に有機農業研究会の全国大会で出会いました。 私が大阪に来てオルターを立ち上げた事を契機に本格的な提携となりました。 当初は未去勢若齢肥育牛(YBB)からの提携でしたが、その後、オルター会員の皆様にも基金をご協力いただいたブラックアンガス牛の放牧牛や、この放牧豚の提携へと広がり、安全安心な畜産品の提供にご尽力いただいています。 放牧豚は最近まで十分な出荷量がなく、品薄傾向が続いてきましたが、やっと順調な増産体制になっています。 品種のWは大ヨークシャー、Lはランドレース、Dはデュロック。 肉の歩溜りよりも 肉重優先でなく 、肉の味に力を入れています。 穀物価格高騰のあおりを受け、これまで興農ファームが使用していた農業残滓物や規格外品の入手が困難となったり、高くなったりして、国産原料の確保に四苦八苦しています。 そのため一部不足分を補うために、暫定的ですが輸入トウモロコシや大豆粕の使用を余儀なくされています。 飼料の国産化を堅持していくために、菜種、大豆、小麦、ジャガイモなどの栽培を広げ、有畜複合農業への本格的な取り組みを始めています。 飼料の発酵はとくに工夫しているところです。 内臓の健康と肉に臭みがつかないようにすること、さらに肉の締りをよくするために、十分に咀嚼できる飼料と草を与えています。 原料は以下、多い順です。 夏は青草で、冬は乾草でふんだんに給餌。 使用している動物医薬品は、子豚に3種類のワクチン(ARインフルエンザ、胸膜炎・肺炎、豚丹毒)とお産前の母豚に急性大腸菌性下痢症のワクチン。 そのほか駆虫剤(寄生虫)、病気発生時、例えば月1頭程度ある発熱時に解熱剤、怪我のときにペニシリンを使用する程度です。 全て自家繁殖です。 出荷は180〜210日齢、生体で100〜120kgです。 運動を十分にさせ、太陽光線を当てビタミンの働きを活発にし、土壌微生物を自由に摂取できるよう、放牧状態にしています。 ここまでエサの安全性にこだわり、しかも100%放牧の豚は、全国にもまずあるとは思えない水準のものといえます。 ト畜は牛肉と同じ北見畜産公社で行い、骨外しまで行います。 スライス、パックは興農ファームの食肉工場で行い、そのあとは冷凍でお届けしています。 この肉を原料として無添加ハムも開発しています。 これにホルモン剤などを含むエサを与えて、いかに早く肉にするかが競われています。 味はもとより、安全性を全く犠牲にされています。 その為、その病気がちの豚から「ムレ肉」と呼ばれる、不味くて不健康な薬臭い豚肉がスーパーの店頭に並んでいるのです。 黒豚(バークシャー)が話題になっていますが、厳密な意味で黒豚と言える豚は国内には殆どいません。 豚のエサには主としてトウモロコシや大豆等の輸入穀物が与えられていますが、ポストハーベスト農薬、チェルノブイリ放射能汚染、遺伝子組み換え問題等があります。 安全な食べものを謳う自然食業界の放牧豚や開放型踏み込み式豚舎飼育や、「木酢豚(薬品の代わりに木酢液で衛生管理をしているだけのもの)」、「自然豚」等でも、情緒的な謳い文句だけで実際にはエサを改善できているケースは殆どない有り様です。 またリサイクルを売りものに、残飯養豚を一部で行われているケースがありますが、現代ではその残飯が農薬や添加物だらけの有り様で、とても容認できるエサとはいえない状態です。 そして発生する病気の予防として薬漬けが行われています。 現在国内で最もひどい豚の飼い方は「清浄豚」と称して販売されている豚肉で、その謳い文句は 「刺身で食べられる」衛生的な豚というのです。 その実態は、まず帝王切開して無菌的に取り出した子豚を、農薬の霧たち込める密封型の豚舎で無菌的なエサで育てます。 つまり、ばい菌も住めない様な化学薬品まみれの中で育てた豚だという事です。 現在、動物医薬品や飼料添加物として1,200種以上もの薬品が認可されています。 国は家畜に関しては、動物だからという理由から、人に対する食品添加物(これも非常に甘い規制)よりも更に野放し状態にしています。 しかし、畜産品として結局は人の口に入る事を考えれば、到底放置できるものではありません。 安全なのは、自然の中で暮らし、泥んこ遊びをして育つ様な豚だという事を忘れてはいけません。 今日、悪臭等の畜産公害が問題となって、太陽の当たらない密封型豚舎で、換気は活性炭等を使った強制換気で外へ臭いのもれない豚舎が主流となっています。 これに比べれば開放型の豚舎、しかもオガくず(輸入木材は農薬の汚染があって危険、豚はそれを口にするからです)を厚くひいた踏み込み式のものは随分ましとはいえます。 まして、健康な環境に放牧される方が更によい事はいうまでもないでしょう。

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