イージス艦 こんごう。 こんごう型護衛艦

あたご型護衛艦

イージス艦 こんごう

2008年2月19日、海上自衛隊の最新鋭イージス艦「あたご」と漁船の衝突事故がありました。 漁船は船首、操舵部、船尾に分断されて沈没しています。 乗っていた二人の漁師は、いまだ行方不明です。 (3月1日現在) 事故を起こしたイージス艦は海の要塞ともいわれている近代のハイテク兵器ですが、ほかの艦船とどのような違いがあるのでしょうか。 今回はイージス艦がどのような船なのかを探ってみましょう。 特定の艦の名前ではありません。 イージスの語源は、古代ギリシャ神話に登場する最高神ゼウスが、娘である戦の神アテナに与えた、あらゆる邪悪を払う盾(胸当て)の名称からとられています。 現代の軍用艦は高度な情報処理能力とネットワークを備えた巨大な戦闘コンピュータシステムともいわれています。 イージス艦に装備されている砲やミサイル、魚雷などは、すべてイージスシステムに接続され、制御されています。 イージスシステムで特徴的なのはレーダーで、SPY-1レーダーと呼ばれる8角形をしたフェイズドアレイ・レーダー4枚を4方向に向けて設置されています。 探知距離は最大で450キロ以上、200以上の探知目標をとらえることができます。 イージス艦の任務は、主に防空に置かれており同時に多数飛来する航空機やミサイルを早期に察知して艦隊を守ることにあります。 まさに、盾のような役割をするわけですね。 現在日本では、こんごう型護衛艦を4隻、あたご型護衛艦を1隻保有しており、あたご型2番艦を建造中です。 ちなみに、イージス艦1隻のお値段は、約1400億円、こんごう型護衛艦の1隻あたりの建造価格は1357億円です。 最初のイージス艦は、アメリカで建造されたミサイル試験艦ノートン・サウンドです。 この艦はフェイズドアレイ・レーダーSPY-1の目標追尾試験とミサイル発射試験が行われ成功しました。 これを受けて1983年にスプールアンス級の船体にイージスシステムを搭載したタイコンデロガが就役されています。 しかしタイコンデロガは、イージスシステムを前提とした設計でなかったためレーダー配置などに無駄が多く重量が重くなってしまうという問題がありました。 またタイコンデロガ級は建造価格が高くなることも問題であったことから後継のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦では、イージスシステムに特化した設計を採用してコストも抑えられています。 現在ではアメリカ、日本のほかに、スペイン、ノルウェー、韓国がイージス艦を保有しています。 「こんごう型護衛艦」は、「DDG-173 こんごう」、「DDG-174 きりしま」、「DDG-175 みょうこう」、「DDG-176 ちょうかい」の4隻が現在就役中です。 アーレイ・バーク級からの主な変更点は、主砲がMk45からオート・メラーラ製127mm砲になり、対地攻撃用のトマホーク巡航ミサイルが搭載されていないことです。 また対潜ソナーは日本独自開発のものが使用されています。 「あたご型護衛艦」は、耐用年数を迎える「たちかぜ型護衛艦」の代替艦として建造され、2007年に就役した世界最大のイージス艦です。 現在就役中の同型艦は「DDG-177 あたご」で、「DDG-178 あしがら」が現在建造中です。 基本的には「こんごう型護衛艦」の強化発展型ですが、従来のヘリコプター着艦甲板に加え、ヘリコプター格納庫も備えたために全長が長くなっています。 ちなみに格納庫には常時格納されるヘリコプターはありません。 そのほかの「こんごう型護衛艦」からの主な変更点は以下の通りです。 ・イージスシステムのバージョンが、最新のベースライン7. 1Jにあがっています。 ・フェイズドアレイレーダーが、改良型のSPY1-D V に変更され、捜索追尾能力と捕捉能力が上がっています。 ・データリンク機能が上がり、システムが高速化しています。 ・主砲がイージスシステムと親和性の良い米国製Mk45Mod4・62口径5インチ単装砲に変更されています。 ・対艦ミサイルが、国産の90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)に変更されています。 排水量は64000トンで、「こんごう」の7250トンに比べるとはるかに巨大です。 武装も46センチ砲を筆頭に多くの機銃を備えており、主砲の射程距離は40キロメートルです。 一方、「こんごう」に装備されている対艦ミサイルハープーンSSMは、110キロメートル以上の射程を持ちます。 つまり、大和の主砲が届かない位置からイージス艦はミサイルで大和を攻撃できるのです。 そのため2003年、日本は日本版弾道ミサイル防衛(BMD)システムの導入を閣議決定しました。 そのBMDにおいてイージス艦は重要な役割を担っています。 イージス艦のスタンダードミサイル SM-3を使用して弾道ミサイルが宇宙空間を飛行しているところを打ち落とそうというものです。 SM-3が運用できるイージス艦であれば、将来的には理論上1隻で日本全土を弾道ミサイルから防衛することができるといわれています。 また強化プラスチック製の漁船はレーダーで探知しにくいとの指摘もあります。 演習では、忍び寄った艦艇が至近距離からイージス艦に攻撃を加えて戦果をあげた例もあるそうです。 民間船との事故防止はもちろんですが、実戦を考えても海上の状況把握と行動に改善が求められるところですね。

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艦隊防空、ミサイル防衛を担うイージス艦:海上自衛隊「こんごう」型護衛艦 自衛隊新戦力図鑑13|MotorFan[モーターファン]|ページ 2/2

イージス艦 こんごう

2020-04-02 令和2年 松尾芳郎 防衛省は2020年3月19日、ジャパン・マリン・ユナイテッド JMU 横浜事業所磯子工場で、護衛艦「まや」の引渡し式および自衛艦旗(軍艦旗)授与式を河野太郎防衛大臣出席のもとで行なった。 自衛艦旗を掲揚した「まや」は海上自衛隊の編成に加わり、横須賀基地に配備された。 [まや]は第1護衛隊群第1護衛隊に編入され、横須賀に配備された。 建造費は1,680億円。 海自7隻目のイージス艦となる。 基準排水量8,200 ton、満載排水量10,250 ton、全長170 m、最大幅21 m、乗員約300名。 機関は燃費の少ないCOGLAS方式で出力は69,000 HP、速力30 Kt。 図2:(河野太郎防衛大臣)自衛艦旗授与式で河野太郎防衛大臣から「まや」艦長小野修司一等海佐 防大39期 に自衛艦旗が授与された。 式典は武漢ウイルス対策で規模を縮小し100人ほどが参列して行われた。 河野防衛大臣は「1日も早く任務に即応し得るように日々の訓練に努められたい」と訓示があり、この後「まや」は乗員の手で横須賀基地に回航された。 「まや」は、まや級イージス艦の1番艦で「摩耶」と書き、兵庫県神戸市六甲山地の真ん中にある「摩耶山」に由来する。 日露戦争で活躍した砲艦「摩耶」、先の大戦でフィリピン沖海戦で米潜水艦に雷撃され沈没した高雄型重巡洋艦「摩耶」に続き、3代目となる。 2番艦は現在艤装中の「はぐろ(羽黒)」で来年 2021 3月に完成、就役する。 さらに来襲する巡航ミサイル、有人・無人航空機、水上艦艇、それに撃ち漏らした弾道ミサイルをターミナル段階で迎撃するSM-6ミサイルを搭載する予定である。 これは艦艇、航空機、などがネットワークで結ばれ、それぞれのセンサーがキャッチした敵情報をリアルタイムに共有し、識別して攻撃できるシステム。 我国でCECを搭載するのは「まや」が初めてだが、続いて来年3月に就役するイージス艦「はぐろ」に搭載され、2019年3月から導入が始まった早期警戒機「E-2D」アドバンスド・ホークアイ・合計13機にも搭載される。 さらに山口、秋田両県に配備予定のイージス・アショアにも装備される。 [CEC]は同盟国間同士でもリンクされるので、米軍やオーストラリア軍とでも情報を共有でき、同盟国間の共同ミサイル防衛体制が構築される。 [CEC]の導入が進めば、中国が急速に能力を向上させている巡航ミサイルや、北朝鮮の弾道ミサイルへの対処能力が一段と高まる。 米海軍の艦艇、航空機、海兵隊の防空能力を向上させ、特に敵の巡航ミサイルと航空機の脅威に対抗するため、友軍の火器管制システムを一体化して効果的に運用する。 [CEC]は、飛行目標に関するレーダー情報と敵味方識別 IFF センサー情報を共有するためのハードウエアとソフトで構成される。 友軍 艦艇、E-2D、陸上レーダーなど のセンサー情報は、火器管制に使える高精度の情報で、 DDS経由でリアルタイムで友軍(艦艇や地上配備の対空ミサイル)に伝えられる。 各艦艇は[CEC]を通じて、CEP内のソフトでデータを処理し、デイスプレイに飛来する敵目標を表示する。 このように[CEC]システムは、友軍のプラットフォーム 艦艇、航空機、地上配備など が装備するセンサー類およびそれらの戦闘 combat システムを接続する役割を務めている。 [CEC]の中心的装置はCES=Common Equipment Set)と呼ばれ、各プラットフォームに装備されている。 これは海自イージス艦「まや」と「はぐろ」および陸上配備予定のイージス・アショア2箇所 山口県と秋田県 に装備される。 図3: Naval News 16 Jan. 「まや」級イージス艦、建造が始まっている30 FFMフリゲート、山口・秋田両県に設置するイージス・アショア、さらには米海軍艦艇にも装備される。 各プラットフォームの戦闘指揮所に設置され、高解像度デジタル画像表示のタッチ・スクリーン型、従来の表示装置に比べ状況把握能力が一段と向上している。 海自イージス艦の系譜 海上自衛隊には、「こんごう」級、「あたご」級、「まや」級と3種のイージス艦があるが、その内容はかなり異なっている。 東西冷戦が激化した1970年代、旧ソ連は大型爆撃機から多数の対艦ミサイル発射し米国と日本を含む同盟国の艦艇を攻撃する計画を立てていた。 これに対処するため、我国は1987年 昭和52年 に複数の空中目標を同時に迎撃できる「イージス戦闘システム」搭載のイージス艦4隻の建造を決めた。 1998年(平成10年)までに4隻の配備が完了した。 1998年 平成8年 ごろから北朝鮮、中国の弾道ミサイルの脅威が懸念されるようになったため、2003年 平成13年 になると、この4隻に米国が開発する弾道ミサイル防衛システム[BMD]を導入することを決定。 これに基づき弾道ミサイルを迎撃する[SM-3]ミサイルを運用するための改修を実施した。 「あたご」級は、艦型がステルス形状になり、ヘリコプター格納庫が新設された。 レーダーは低空飛行をする目標の追尾・捕捉機能を向上した[SPY-1D V ]になり、イージス・システムは[ベース・ライン9]になっている。 ミサイル発射用の[Mk-41 VLS] 垂直発射装置 は、配置が「こんごう」級とは違い前部に64セル、後部に32セルとなり、対艦ミサイルも国産「90式対艦誘導弾」が使えるようになった。 主砲は同じ127 mm単装砲だが砲身の長い62口径の[Mk 45 Mod 4]となり射程が伸びている。 「あたご」級は、初めから弾道ミサイルの探知・追尾能力は備えていたが[SM-3]の運用能力はなかった。 このため2016年 平成28年 から[SM-3]用の改修工事が始まり、このほど完成した。 動力装置では、「こんごう」、「あたご」はガスタービンのみを使用しているが、低速航行時では燃費が悪いと云う問題がある。 「まや」級ではこれを改め、低速・巡航時にはガスタービンが発電した電力でモーターを駆動・スクリューを回し、高速時には別のガスタービンでスクリューを回す推進方式を採用している。 「まや」級、「あたご」級、「こんごう」級を比較する表を以下に示す。 これに加えて、最新型E-2Dアドバンスド・ホークアイを13機導入中である。 空自のE-2Dは、陸上基地用で米海軍仕様とは多少異なり、燃料タンクを増設し滞空時間を8時間 米海軍機は5時間 に延長、さらに空中給油設備も備える。 また米海軍E-2Dには無い簡易トイレとギャレイを装備して乗員の負担を軽減している。 E-2Dアドバンスド・ホークアイはノースロップ・グラマン製、初飛行は2007年8月。 E-2Cとは異なりE-2DのレーダーはUHF帯を拡げ海上や地上の小さな移動目標の識別・追跡が容易になっている。 米海軍は、現有のE-2Cホークアイを2027までに順次新型のE-2Dアドバンスド・ホークアイに更新する予定で、調達数は試験機を含み75機、10個中隊分で、総額は200億㌦ 約2兆円 になる。 図5: US Navy 米海軍空母「 USS Harry S. Truman 」に着艦する新型早期警戒機 E-2D アドバンスド・ホークアイ。 新レーダーは 300MHz-3GHz UHF 帯使用の AESA 型で、レーダー・ドームを回転させて 360 度全周にわたり空中・洋上を監視する。 さらに一定の範囲を重点的に監視するモード、レーダーを目標方向に向け回転を止め捜索するモードを備える。 目標捜索モードでは E-2C の5倍以上の探知距離があるという。 もう一つは、情報伝達能力が改善され友軍にリアルタイムで情報を送ることができ、いわゆる戦場の指揮管理機能 [CEC] を有する点である。 エンジンは E-2C と同じアリソン・ロールスロイス T56A-427A 出力 5,100shp を 2 基。 最大離陸重量 26 ton 、乗員 5 名、機体寸法、性能は E-2C と同じ。 原型の E-2 が初飛行したのは 1960 年だから今年で 60 年にもなる長寿命の機種である。 SM-3 block 2A [RIM-161] SM-3迎撃ミサイルはレイセオン Raytheon 製で、中距離弾道ミサイル IRBM の脅威から自軍の艦艇を守るミサイル。 図6: Missile Defense Agency [SM-3] の変遷。 海自イージス艦「こんごう」級4隻が搭載するのは「 SM-3 Block IA 」。 改良型の Block IB は 2014 年から米海軍で配備中。 両者共、発射時 重量は 1. 5 ton 、高さ(全長)は 6. 55 m。 [SM-3 Block IIA] はレイセオン/三菱重工の共同開発で、 2 段目、 3 段目の直径が 53. 3 cm 21inch と太くなり長射程化が計られている。 性能が向上したセンサー類を装備した運動性の優れた大型の [KW (運動エネルギー)弾頭 ] を搭載する。 2019 年から米海軍で配備が始まったばかりの最新型、これが「まや」級イージス艦に搭載される。 これまでにSM-3 Block IAおよびIBは25回の迎撃実験に成功し、日米両海軍に合計240発以上が引き渡されている。 「射程2,000 km以上」とはイージス艦「まや」1隻だけで日本全土を弾道ミサイル攻撃から護れることを意味する。 図7: Google Map イージス・アショアが設置される山口県萩市陸自演習場を中心にしてSM-3 Block 2Aの射程2,000 km 圏を示した図。 2,000 km圏内には中国東部、北朝鮮、シベリア南東区域が入り、これらの地点から発射される弾道ミサイルは、その上昇過程で弾頭が分離される前に捕捉・撃墜できる。 SM-3 Block 2Aの到達高度は1,000 kmに達するが、これは地球周回低軌道上にある国際宇宙ステーション ISS の高度400 kmよりはるかに高い。 イージス艦「まや」級2隻の戦力化とイージス・アショア基地2箇所が完成すれば周辺諸国からの弾道ミサイル攻撃には十分対抗できる。 1基当たりの価格は、「SM-3 Block 1A、IB」が約20億円、「SM—3 Block 2A」は約40億円、一般の迎撃ミサイルの十倍以上である。 これはKW弾頭が大気圏外で高速で機動飛行する構造になっており、この部分に大きな費用が掛かるためである。 昨年 2019 米国DSCA 国防安全推進局 は、日本向けSM-3 Block 2Aを73基、約33億ドルで売却すると議会に通告した。 これで一昨年 2018 から始まった日本向けSM-3売却数は、SM-3 Block 2 が90基、従来型のSM-3 Block 1Bが64基、合計154基になる。 「こんごう」級4隻にはすでにSM-3 Block 1Aが32基を搭載済みなので、これを加えると合計186基になる。 「こんごう」級4隻はイージス戦闘システムが古いので、SM-3 Block 2Aは運用できず、また「あたご」級2隻はSM-3 Block 2Aを搭載・運用できるが、共同交戦能力[CEC]を装備していないので自艦レーダーの情報で発射することになる。 日本側分担は全て三菱重工が担当。 下の図は米ミサイル防衛局発表のSM-3 Block 2Aの全体図。 SM-3 Block 2Aは、重量1. 5 ton、長さ6. 55 m、筐体直径53. 3 cm、翼幅1. SM-6 SM-6はRIM-174と呼び、レイセオンが作る艦載型対空ミサイルで、一連のスタンダード・ミサイル Standard Missile つまりSM系列の一つである。 系列にはSM-1、SM-2、SM-3がある。 [SM-6]は、[SM-3]と同様艦艇が装備する垂直発射装置・Mk 41 VLSから発射し、来襲する巡航ミサイル、弾道ミサイル、航空機などを迎撃するためのミサイルである。 さらに対艦ミサイルの役目も遂行できる。 米海軍は2013年から配備を開始、系列にはSM-6 Block Iと、2018年には新たに弾道ミサイルをターミナル段階 最終着弾前 に迎撃する能力を持つSM-6 Dual I が完成した。 海自イージス艦「まや」以降に搭載するのは後者と思われる。 SM-6は、使用中のSM-2 Block 4対空ミサイルを基にして、SM-2の弾頭と、航空機搭載の中射程空対空ミサイルAMRAAM [AIM-120]に装備する高信頼性・高精度のアクテイブ・シーカーを組合わせた構造で、SM-2、SM-3と同じブースター Mk72 で加速する。 2017年8月に行われたSM-6 Dual 1の弾道ミサイル迎撃試験 ターミナル段階 で3回連続の成功を収め、SM-2 Block 4の後継機と位置付られた。 更なる改良型SM-6 Block 1Bの開発が進んでいて、本体の直径を太くし 53 cm 、マッハ10の極超音速飛行、長射程のミサイルで、完成予定は2024年とされる。 図9: MDA [SM-6] の外観。 SM-6 Block 1Aは重さ1. 5 ton、長さ6. 55 m、本体の直径34 cm、操舵翼幅1. 57 m、弾頭重量64 kg弾片放出型 blast fragmentation 、弾頭炸裂はレーダーおよび近接信管による、射程は240 km、射高は34,000 m、速度マッハ3. 単価は500万ドル(5. 5億円)。

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アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦

イージス艦 こんごう

2020-04-02 令和2年 松尾芳郎 防衛省は2020年3月19日、ジャパン・マリン・ユナイテッド JMU 横浜事業所磯子工場で、護衛艦「まや」の引渡し式および自衛艦旗(軍艦旗)授与式を河野太郎防衛大臣出席のもとで行なった。 自衛艦旗を掲揚した「まや」は海上自衛隊の編成に加わり、横須賀基地に配備された。 [まや]は第1護衛隊群第1護衛隊に編入され、横須賀に配備された。 建造費は1,680億円。 海自7隻目のイージス艦となる。 基準排水量8,200 ton、満載排水量10,250 ton、全長170 m、最大幅21 m、乗員約300名。 機関は燃費の少ないCOGLAS方式で出力は69,000 HP、速力30 Kt。 図2:(河野太郎防衛大臣)自衛艦旗授与式で河野太郎防衛大臣から「まや」艦長小野修司一等海佐 防大39期 に自衛艦旗が授与された。 式典は武漢ウイルス対策で規模を縮小し100人ほどが参列して行われた。 河野防衛大臣は「1日も早く任務に即応し得るように日々の訓練に努められたい」と訓示があり、この後「まや」は乗員の手で横須賀基地に回航された。 「まや」は、まや級イージス艦の1番艦で「摩耶」と書き、兵庫県神戸市六甲山地の真ん中にある「摩耶山」に由来する。 日露戦争で活躍した砲艦「摩耶」、先の大戦でフィリピン沖海戦で米潜水艦に雷撃され沈没した高雄型重巡洋艦「摩耶」に続き、3代目となる。 2番艦は現在艤装中の「はぐろ(羽黒)」で来年 2021 3月に完成、就役する。 さらに来襲する巡航ミサイル、有人・無人航空機、水上艦艇、それに撃ち漏らした弾道ミサイルをターミナル段階で迎撃するSM-6ミサイルを搭載する予定である。 これは艦艇、航空機、などがネットワークで結ばれ、それぞれのセンサーがキャッチした敵情報をリアルタイムに共有し、識別して攻撃できるシステム。 我国でCECを搭載するのは「まや」が初めてだが、続いて来年3月に就役するイージス艦「はぐろ」に搭載され、2019年3月から導入が始まった早期警戒機「E-2D」アドバンスド・ホークアイ・合計13機にも搭載される。 さらに山口、秋田両県に配備予定のイージス・アショアにも装備される。 [CEC]は同盟国間同士でもリンクされるので、米軍やオーストラリア軍とでも情報を共有でき、同盟国間の共同ミサイル防衛体制が構築される。 [CEC]の導入が進めば、中国が急速に能力を向上させている巡航ミサイルや、北朝鮮の弾道ミサイルへの対処能力が一段と高まる。 米海軍の艦艇、航空機、海兵隊の防空能力を向上させ、特に敵の巡航ミサイルと航空機の脅威に対抗するため、友軍の火器管制システムを一体化して効果的に運用する。 [CEC]は、飛行目標に関するレーダー情報と敵味方識別 IFF センサー情報を共有するためのハードウエアとソフトで構成される。 友軍 艦艇、E-2D、陸上レーダーなど のセンサー情報は、火器管制に使える高精度の情報で、 DDS経由でリアルタイムで友軍(艦艇や地上配備の対空ミサイル)に伝えられる。 各艦艇は[CEC]を通じて、CEP内のソフトでデータを処理し、デイスプレイに飛来する敵目標を表示する。 このように[CEC]システムは、友軍のプラットフォーム 艦艇、航空機、地上配備など が装備するセンサー類およびそれらの戦闘 combat システムを接続する役割を務めている。 [CEC]の中心的装置はCES=Common Equipment Set)と呼ばれ、各プラットフォームに装備されている。 これは海自イージス艦「まや」と「はぐろ」および陸上配備予定のイージス・アショア2箇所 山口県と秋田県 に装備される。 図3: Naval News 16 Jan. 「まや」級イージス艦、建造が始まっている30 FFMフリゲート、山口・秋田両県に設置するイージス・アショア、さらには米海軍艦艇にも装備される。 各プラットフォームの戦闘指揮所に設置され、高解像度デジタル画像表示のタッチ・スクリーン型、従来の表示装置に比べ状況把握能力が一段と向上している。 海自イージス艦の系譜 海上自衛隊には、「こんごう」級、「あたご」級、「まや」級と3種のイージス艦があるが、その内容はかなり異なっている。 東西冷戦が激化した1970年代、旧ソ連は大型爆撃機から多数の対艦ミサイル発射し米国と日本を含む同盟国の艦艇を攻撃する計画を立てていた。 これに対処するため、我国は1987年 昭和52年 に複数の空中目標を同時に迎撃できる「イージス戦闘システム」搭載のイージス艦4隻の建造を決めた。 1998年(平成10年)までに4隻の配備が完了した。 1998年 平成8年 ごろから北朝鮮、中国の弾道ミサイルの脅威が懸念されるようになったため、2003年 平成13年 になると、この4隻に米国が開発する弾道ミサイル防衛システム[BMD]を導入することを決定。 これに基づき弾道ミサイルを迎撃する[SM-3]ミサイルを運用するための改修を実施した。 「あたご」級は、艦型がステルス形状になり、ヘリコプター格納庫が新設された。 レーダーは低空飛行をする目標の追尾・捕捉機能を向上した[SPY-1D V ]になり、イージス・システムは[ベース・ライン9]になっている。 ミサイル発射用の[Mk-41 VLS] 垂直発射装置 は、配置が「こんごう」級とは違い前部に64セル、後部に32セルとなり、対艦ミサイルも国産「90式対艦誘導弾」が使えるようになった。 主砲は同じ127 mm単装砲だが砲身の長い62口径の[Mk 45 Mod 4]となり射程が伸びている。 「あたご」級は、初めから弾道ミサイルの探知・追尾能力は備えていたが[SM-3]の運用能力はなかった。 このため2016年 平成28年 から[SM-3]用の改修工事が始まり、このほど完成した。 動力装置では、「こんごう」、「あたご」はガスタービンのみを使用しているが、低速航行時では燃費が悪いと云う問題がある。 「まや」級ではこれを改め、低速・巡航時にはガスタービンが発電した電力でモーターを駆動・スクリューを回し、高速時には別のガスタービンでスクリューを回す推進方式を採用している。 「まや」級、「あたご」級、「こんごう」級を比較する表を以下に示す。 これに加えて、最新型E-2Dアドバンスド・ホークアイを13機導入中である。 空自のE-2Dは、陸上基地用で米海軍仕様とは多少異なり、燃料タンクを増設し滞空時間を8時間 米海軍機は5時間 に延長、さらに空中給油設備も備える。 また米海軍E-2Dには無い簡易トイレとギャレイを装備して乗員の負担を軽減している。 E-2Dアドバンスド・ホークアイはノースロップ・グラマン製、初飛行は2007年8月。 E-2Cとは異なりE-2DのレーダーはUHF帯を拡げ海上や地上の小さな移動目標の識別・追跡が容易になっている。 米海軍は、現有のE-2Cホークアイを2027までに順次新型のE-2Dアドバンスド・ホークアイに更新する予定で、調達数は試験機を含み75機、10個中隊分で、総額は200億㌦ 約2兆円 になる。 図5: US Navy 米海軍空母「 USS Harry S. Truman 」に着艦する新型早期警戒機 E-2D アドバンスド・ホークアイ。 新レーダーは 300MHz-3GHz UHF 帯使用の AESA 型で、レーダー・ドームを回転させて 360 度全周にわたり空中・洋上を監視する。 さらに一定の範囲を重点的に監視するモード、レーダーを目標方向に向け回転を止め捜索するモードを備える。 目標捜索モードでは E-2C の5倍以上の探知距離があるという。 もう一つは、情報伝達能力が改善され友軍にリアルタイムで情報を送ることができ、いわゆる戦場の指揮管理機能 [CEC] を有する点である。 エンジンは E-2C と同じアリソン・ロールスロイス T56A-427A 出力 5,100shp を 2 基。 最大離陸重量 26 ton 、乗員 5 名、機体寸法、性能は E-2C と同じ。 原型の E-2 が初飛行したのは 1960 年だから今年で 60 年にもなる長寿命の機種である。 SM-3 block 2A [RIM-161] SM-3迎撃ミサイルはレイセオン Raytheon 製で、中距離弾道ミサイル IRBM の脅威から自軍の艦艇を守るミサイル。 図6: Missile Defense Agency [SM-3] の変遷。 海自イージス艦「こんごう」級4隻が搭載するのは「 SM-3 Block IA 」。 改良型の Block IB は 2014 年から米海軍で配備中。 両者共、発射時 重量は 1. 5 ton 、高さ(全長)は 6. 55 m。 [SM-3 Block IIA] はレイセオン/三菱重工の共同開発で、 2 段目、 3 段目の直径が 53. 3 cm 21inch と太くなり長射程化が計られている。 性能が向上したセンサー類を装備した運動性の優れた大型の [KW (運動エネルギー)弾頭 ] を搭載する。 2019 年から米海軍で配備が始まったばかりの最新型、これが「まや」級イージス艦に搭載される。 これまでにSM-3 Block IAおよびIBは25回の迎撃実験に成功し、日米両海軍に合計240発以上が引き渡されている。 「射程2,000 km以上」とはイージス艦「まや」1隻だけで日本全土を弾道ミサイル攻撃から護れることを意味する。 図7: Google Map イージス・アショアが設置される山口県萩市陸自演習場を中心にしてSM-3 Block 2Aの射程2,000 km 圏を示した図。 2,000 km圏内には中国東部、北朝鮮、シベリア南東区域が入り、これらの地点から発射される弾道ミサイルは、その上昇過程で弾頭が分離される前に捕捉・撃墜できる。 SM-3 Block 2Aの到達高度は1,000 kmに達するが、これは地球周回低軌道上にある国際宇宙ステーション ISS の高度400 kmよりはるかに高い。 イージス艦「まや」級2隻の戦力化とイージス・アショア基地2箇所が完成すれば周辺諸国からの弾道ミサイル攻撃には十分対抗できる。 1基当たりの価格は、「SM-3 Block 1A、IB」が約20億円、「SM—3 Block 2A」は約40億円、一般の迎撃ミサイルの十倍以上である。 これはKW弾頭が大気圏外で高速で機動飛行する構造になっており、この部分に大きな費用が掛かるためである。 昨年 2019 米国DSCA 国防安全推進局 は、日本向けSM-3 Block 2Aを73基、約33億ドルで売却すると議会に通告した。 これで一昨年 2018 から始まった日本向けSM-3売却数は、SM-3 Block 2 が90基、従来型のSM-3 Block 1Bが64基、合計154基になる。 「こんごう」級4隻にはすでにSM-3 Block 1Aが32基を搭載済みなので、これを加えると合計186基になる。 「こんごう」級4隻はイージス戦闘システムが古いので、SM-3 Block 2Aは運用できず、また「あたご」級2隻はSM-3 Block 2Aを搭載・運用できるが、共同交戦能力[CEC]を装備していないので自艦レーダーの情報で発射することになる。 日本側分担は全て三菱重工が担当。 下の図は米ミサイル防衛局発表のSM-3 Block 2Aの全体図。 SM-3 Block 2Aは、重量1. 5 ton、長さ6. 55 m、筐体直径53. 3 cm、翼幅1. SM-6 SM-6はRIM-174と呼び、レイセオンが作る艦載型対空ミサイルで、一連のスタンダード・ミサイル Standard Missile つまりSM系列の一つである。 系列にはSM-1、SM-2、SM-3がある。 [SM-6]は、[SM-3]と同様艦艇が装備する垂直発射装置・Mk 41 VLSから発射し、来襲する巡航ミサイル、弾道ミサイル、航空機などを迎撃するためのミサイルである。 さらに対艦ミサイルの役目も遂行できる。 米海軍は2013年から配備を開始、系列にはSM-6 Block Iと、2018年には新たに弾道ミサイルをターミナル段階 最終着弾前 に迎撃する能力を持つSM-6 Dual I が完成した。 海自イージス艦「まや」以降に搭載するのは後者と思われる。 SM-6は、使用中のSM-2 Block 4対空ミサイルを基にして、SM-2の弾頭と、航空機搭載の中射程空対空ミサイルAMRAAM [AIM-120]に装備する高信頼性・高精度のアクテイブ・シーカーを組合わせた構造で、SM-2、SM-3と同じブースター Mk72 で加速する。 2017年8月に行われたSM-6 Dual 1の弾道ミサイル迎撃試験 ターミナル段階 で3回連続の成功を収め、SM-2 Block 4の後継機と位置付られた。 更なる改良型SM-6 Block 1Bの開発が進んでいて、本体の直径を太くし 53 cm 、マッハ10の極超音速飛行、長射程のミサイルで、完成予定は2024年とされる。 図9: MDA [SM-6] の外観。 SM-6 Block 1Aは重さ1. 5 ton、長さ6. 55 m、本体の直径34 cm、操舵翼幅1. 57 m、弾頭重量64 kg弾片放出型 blast fragmentation 、弾頭炸裂はレーダーおよび近接信管による、射程は240 km、射高は34,000 m、速度マッハ3. 単価は500万ドル(5. 5億円)。

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