クジラアタマの王様 伊坂幸太郎。 『クジラアタマの王様』:伊坂幸太郎【感想】|未来を切り拓くのは、誰だ

伊坂幸太郎さん『クジラアタマの王様』

クジラアタマの王様 伊坂幸太郎

最初は漫画と文章との乖離があり、よくわからない状況が続いていたが、読み進める内に意味がわかるというのも面白い! 迫り来るものに対してどんな展開になるの?どう解決するの?ってドキドキ感、ワクワク感も良い!」(もなか) * 「伊坂さんは、いつも新しいものを読ませてくれる。 新たな小説の可能性を感じました。 ページを開くと、いきなり漫画があり、新手法に拘り過ぎてはいないかと?心配になりながら読み進めていくと、あっと驚く仕掛けがある。 読後感は何とも爽快!未来に希望が持てない人に力をくれます!製薬会社の広報担当の岸、人気アイドル・小沢、そして本作のキーマンである県会議員・池野内。 この3人が出会ってから奇妙な物語がはじまる。 次々と出会う事件に翻弄され、虚構と現実の境目が分からなくなってくる。 人生は戦いの連続。 決断する勇気が沸いてくる一冊。 その斬新な工夫方法に絶賛の声が上がっているのですが、その仕掛けとは「絵を効果的に使う」こと。 ひとつの世界では製菓会社の社員が見舞われる現実的なトラブルを小説で描き、もうひとつの世界では巨獣たちと戦う戦士たちの活劇を幻想的な雰囲気の絵で描いています。 絵は日本的な漫画とも、いわゆる挿絵とも異なった体裁で、小説の中のピースとして補完しながら、絵もまた独立したストーリーが進んでいく構造です。 これにより、読者はまるでふたつのストーリーを追うかのように、目まぐるしくそれぞれが展開するのです。 絵の内容や構成は伊坂さんが考え、それをイラストレーターの川口澄子さんが絵として立体化。 何かあると思ってたんだよね……。 「動かない鳥」として知られ、謎めいた雰囲気のハシビロコウ。 大きなくちばしとつぶらな瞳でファンが急増中のこの鳥が、果たしてどのように伊坂作品に登場するのか……。 ここではカリスマ書店員として知られる新井見枝香さんの感想をヒントに、詳細は実際に読んでいただいてのお楽しみですが、ハシビロコウを魅力たっぷりに描いた伊坂さんがこの鳥を登場させた経緯について、「ハシビロコウの持つ洋風とも和風ともとれる雰囲気が、この世界をナビゲートするのにぴったりだと思って」と言っているとおり、ただ者ならぬ役割を担います。 こんな形で一作の小説を描く事が可能で、それがとびっきりのエンターテイメントを見せてくれた。 伊坂幸太郎の言葉に、川口澄子さんのイラストは抱き合っているようだった。 今回は、死神も殺し屋も反社会的勢力も登場しません。 これは伊坂作品としては珍しいケースで、ストーリーづくりにも、伊坂さんの苦労と工夫がちりばめられています。 異物混入事件、謝罪会見、停電、錯綜する情報、過熱報道、パンデミック……。 誰もが「こうなったら嫌だな」「こんな世の中になったら怖いな」といった不安を、伊坂さんがフィクションとして切り取り、何の変哲もない一般人である主人公がそれらの危機に立ち向かっていきます。 巻き起こる出来事が誰にでも起こりうるものだからこそ、読み手は共感し、深くストーリーに没入できるのです。 小説と絵、このふたつのアプローチがどのようにしてひとつのストーリーとして収斂していくのか? そこは伊坂幸太郎さん、これでもかと工夫を凝らし、鮮やかに回収される伏線とラストに向かってどんどん加速していく展開は、まさに伊坂作品の真骨頂。 読後感の心地よさは「爽快」のひと言に尽きます。

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伊坂幸太郎「クジラアタマの王様」

クジラアタマの王様 伊坂幸太郎

2019年8月7日「クジラアタマの王様」を読みました。 感想 <クジラアタマの王様> やっぱり、伊坂幸太郎さんは、読者を楽しませてくれますねえ。 新刊が出る度にそう思うのは、想像したことのないモノとの出会いであったり、ファンをニヤリとさせてくれるサービスであったりします。 「クジラアタマの王様」では、セリフのないコミックーパートがあるという点が、新しい出会いでした。 今までに、そういう本を見たことがありません。 なんと斬新な小説でしょう。 伊坂幸太郎さんの小説によくある、伏線の回収が、このコミックパートでも使われているように思いました。 最初は、絵の意味がよくわからなくても、読み進めていくうちに、ああ、そういうことなのね、と。 あるいは逆に、小説に書かれていたことが、後に絵に描かれていて、ああ、なるほど、こういうことなのね、と。 面白い仕掛けのある本でした。 第一章から第三章までは「スマートフォン」、第四章になると「パスカ」が使われています。 第四章は「スピンモンスター」に描かれていた近未来なのかもしれません。 また、「カタツムリの活躍する絵本」(P236 というのは、せつみやこさんが書いた「アイムマイマイ」でしょうかねえ。 こうした、他作品との出会いを楽しませてくれるところも大好きです。 その会社の広報部員である岸は、次々とトラブルに見舞われます。 岸は、人気ダンスグループのメンバーである小沢ヒジリ、都議会議員の池野内征爾と出会います。 彼らは言うのです。 「3人は奇妙な夢でつながっている」その夢の中には、『ハシビロコウ』が登場するのだと。 現実と夢の世界が交錯する物語です。 また、小説とセリフの無いコミックが交錯する、ユニークな仕掛けも楽しめます。 ----------------------------------------------------------------- 単行本 <クジラアタマの王様> 出版社 NHK出版 発売日 2019年7月9日 文庫本 <クジラアタマの王様> クジラアタマの王様 文庫化はまだです 出版社 発売日 ----------------------------------------------- ----------------------------------------------- kamihiko-kirara.

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伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』感想【待望の書き下ろし長編小説】|【雑記ブログ】いちいちくらくら日記

クジラアタマの王様 伊坂幸太郎

ここからネタバレ注意! クジラアタマの王様の感想(ネタバレ) 伊坂幸太郎が叶えた長年の夢 というわけで、今回の『クジラアタマの王様』は長年の夢がようやく叶ったものです。 とあとがきで伊坂さんは書いています。 長年の夢とは 「小説の中に、作品の一部としてコミックパートが含まれる構造」を実現させることです。 『クジラアタマの王様』では間間に川口澄子さんのコミックパートが挿入されています。 始め私は挿絵を見るような気持ちで読んでいました。 でも読み進めるに従って、このコミックパートを「読む」ことで浮かんでくる世界の感触のようなものがあることに気づきました。 表現方法として小説の長所、映画やコミックの長所というものはあると思います。 奇をてらうとか変化球を投げるとかではなくて、この物語を一番活き活きと表現できる方法を考えた末に出来上がったのがこの『クジラアタマの王様』の小説の中にコミックパートが挟まれている意味なのでした。 現実と夢の世界があること。 「戦う」というアクションシーンがあること。 そして最後に読者に分かってくる巧みな仕掛けが活きてきて、小説を読むようにコミックパートを読んでいた自分がいました。 楽しい! 頭から引き込まれる展開と登場人物の魅力 全くタイプが異なり、ノリがいいというかユーモアのある登場人物が多数登場します。 岸、小沢ヒジリ、池野内にしてもまるで違う人生を送っていて性格も違うというのにどこか憎めないというか雰囲気が似ているように感じます。 そんな登場人物の身の回りに起きる出来事は読者である私の身の回りにもありそうな出来事ばかりで小説の頭から物語に引き込まれます。 異物混入事件もホテルの火災もサーカス団の猛獣が逃げ出してしまうということもどこかで聞いたことがあるけれども、対多数の人にとっては自分の身の周りにはあまり関係がない事柄ではないでしょうか。 ニュースは見たことがあったが……というくらいの。 でも小説の世界に入っていくといきなりそんな事件に巻き込まれるわけで、下手に聞いたことがあって状況を想像できるから、 心臓に悪いくらいにどきどきしてしまいます。 特に異物混入事件のお客様からのクレーム対応なんて想像しただけで胃が痛くなります。 そして保身とプライドばかりの上司なんて、本当頭に浮かんで怒りを覚えました(笑) これはどうなってしまうのだろうという臨場感が感じれる出来事が小さいものも大きいものも小説の開始から終わりまでずっと散りばめられていて読んでいて楽しいです。 どこかのテレビ番組の「モヤっと」「スッキリ」ではありませんが、 そんな どきどきと爽快感繰り返していくといつの間にか物語の大きな枠組みに気づかされて、なお終盤読むスピードが加速していくような読む意欲の爆発的向上でした。 「胡蝶の夢」のような世界 夢の世界の勝ち負けが現実世界の出来事の善し悪しに絡んでいくことはなんとなく池野内の話で分かってはいました。 ただ後半になって夢の世界が地図を受け取り、時には仲間と集まり、ハシビロコウの指し示すミッションに挑むような流れが頭に馴染んでくると、途中のコミックパートと小説の結びつきにも楽しみを感じていきます。 コミックパートの内容は小説でも活字で説明ありますが夢の世界がファンタジー的な世界でもあるので合わせて読むとまた新しい面白さがあります。 小説内には 「胡蝶の夢」(中国の思想家・荘子による、夢の中の自分が現実か現実の方が夢なのかといった説話)という表現もありました。 そのくらい夢の中の世界の自分達に引っ張られている現実の自分がいる部分があるくらいに自分らしく、根本の大事な気持ちが夢の中にあります。 ラスト、夢の自分をなぞって動く岸の姿は熱いです。 銀の鎧の男は返ってきた矢を再びつかむと、瞬時に足を前に出し、全力投球する投手よろしく、思い切り投げた。 意識するより先に僕は、その動きをなぞっていた。 紐を激しく引っ張り、矢を取り戻す。 ふわっと戻ってきた、ロケット型のグッズを必死につかむ。 前方に突き刺すつもりですぐに放っている。 もう一度! やり直すんだ。 一回負けてもチャンスはあるということ。 そもそも夢の中で岸が持っていた武器「スローイングアロー」(矢に紐がついたもの)は何度失敗しても立ち上がる岸の本質なのかもしれません。 クジラアタマの王様の感想・まとめ 冒頭から登場する謎の鳥「ハシビロコウ」の雰囲気が不思議で不安で、あとこれからどうなるのか期待する気持ちがありました。 (アイキャッチの背景はハシビロコウの画像です) どきどきしながら読み進めていつの間にか夢中で最後まで一気に読んでいました。 物語の途中で時間が途中で15年流れるのでなおさら伏線が回収された時にしみじみしてしまいました。 過去話してきた青年が大人になってこういう関わり方をするのか、と思う場面があったり、インフルエンザの話も序盤から修学旅行の校長の話など活きている部分がありました。 細かいところを上げるときりがないくらいに会話の節々の小さな部分から大きな部分までどんどん新しい面白みが増えていく内容は読み手を離しません。 魅力的な登場人物が織りなす物語ですから彼らの会話には名言と思えるくらい感じるところも多くて個人的には、 「短期的には非難されても、大局的には大勢の人を救うほうを選ぶべきじゃないの」 という言葉は胸に残っています。 目先のことではなくて自分の思い描くことに真っすぐ向かうような行動をとっていきたいです。 あっという間に読み終えてしまう止められない面白さ溢れた作品でした。

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