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いぬ い どんどん すき に なる

もくじ• 映画「いぬやしき」の制作やキャスト陣の裏側・裏話BEST7! ではさっそく、映画「いぬやしき」の制作やキャスト陣に関する裏側・裏話をご紹介していきます。 今回は、私が選び抜いたとっておきの7つの裏話をお楽しみください。 1.主演二人の体づくり 本作で獅子神役を演じた佐藤健さんは、映画「いぬやしき」の撮影の前に『亜人』という別の映画の撮影をしていたと言います。 C 2018「いぬやしき」製作委員会 C 奥浩哉/講談社 映画『亜人』もアクションが多い作品であったので、本作「いぬやしき」はその頃から行っていた体づくりの延長線上という形で撮影が行われました。 当時はサラダやささみだけしか食べないという食事制限も行っていたそうで、キャストの方々と一緒にご飯を食べることも無かったと言います。 一方の木梨憲武さんが演じた犬屋敷壱郎というキャラクターは痩せ細ったおじいちゃんであったため、体を鍛える必要はありませんでした。 それをいいことに、毎日おつまみを食べながら少しづつお酒を飲んでいたのですが、それを続けるうちに徐々に木梨さんのおなかが出てきてしまいます。 少し太ってしまった木梨さんは元の体に戻さなければいけなくなり、最終的に食事面でも獅子神VS犬屋敷という戦いが繰り広げられていたそうです。 そして無事に映画「いぬやしき」の撮影が終わったとき、佐藤健さんは撮影現場にあった焼きそばをバァーッと一気に食べていたと言います。 (笑) 佐藤健さんはその時に食べた焼きそばが今までで一番おいしく感じたと語り、幸せをかみしめていたのだそうです。 役者さんたちは撮影のために体づくりなども行わないといけないので、かなり辛いお仕事ということが分かる裏話でしたね。 2.木梨憲武さんが焼き鳥屋を開業? C 2018「いぬやしき」製作委員会 C 奥浩哉/講談社 映画「いぬやしき」にて、犬屋敷一郎の娘である犬屋敷麻理を演じた女優の三吉彩花さん。 そんな三吉彩花さんがある日の休憩中、撮影現場に漂ういい匂いを感じたのだと言います。 そして休憩中にいい匂いのする方へ行ってみると、なんと木梨憲武さんが焼き鳥を焼いていました!(笑) スタッフの中に混ざって、何食わぬ顔で「CGの待ち時間が長いから」と説明しながら焼き鳥を焼く木梨さん。 (笑) その後木梨さんは「待ち時間はすべて店を開いていた」と語り、焼き鳥以外にも現場での炊き出しなどを行っていたことを明かしました。 映画「いぬやしき」の中では犬屋敷壱郎というキャラクターを演じていても、『とんねるずの木梨憲武』という人間は変わらなかったようですね。 (笑) 3.父と娘役、約10年ぶりの共演は炭火焼のお仕事? 実は木梨憲武さんと三吉彩花さんのお二人は約10年前にCMで父と娘役で共演していたそうで、本作「いぬやしき」で10年ぶりの共演を果たしました。 戦闘シーンが印象的な本作ですが、木梨さんと三吉さんは父と娘役ということからドラマ的なシーンが多くあったと言います。 しかしそんな二人の一番の思い出は、撮影での思い出よりも休憩時間のケータリングでの思い出のほうが強かったのだそうです。 (笑) 上記でもお伝えしましたが、木梨憲武さんは撮影の合間にケータリングの炭火焼鳥を作っていました。 初めに木梨さんが焼き鳥を焼いていることに気づいた三吉彩花さんでしたが、実はその後に木梨さんとともに三吉さんも焼き鳥を作っていたと言います。 思ったよりも力が入っていたそうで、撮影での作業よりもケータリングでの作業のほうがやることが多かったのだそうです。 (笑) 木梨さんは焼き鳥を焼いた日の撮影終了時に「今日は焼き鳥を焼いたから、明日は餅でも焼こうか」といって、ケータリングにかなりやる気になっていました。 (笑) それに対して三吉さんや周りのプロデューサーたちも「きなこやあんこも用意した方が良いですかね?」となかなかの提案をしていました。 (笑) 映画内では娘に疎まれる父親という関係性でしたが、撮影現場ではとても良い父娘関係を築いていたのですね! 4.自らスタントアクションを行った木梨憲武さん 映画「いぬやしき」はアクションシーンが多いこともあり、スタントマンによるスタントアクションも多く撮影されていました。 その中のひとつで犬屋敷一郎が獅子神に初めてあったとき、獅子神の指でっぽうに吹き飛ばされるシーンがあります。 そのシーンもスタントマンで撮影される予定でしたが、木梨さんが「一回自分でやってみる」といって自ら行うこととなりました。 C 2018「いぬやしき」製作委員会 C 奥浩哉/講談社 それに対して周りのスタッフたちは止めようとしますが、木梨さんは「みんな一回静かにして!すげぇ集中!ケガしませんように…(笑)」と言って実際に行っていました。 たった一度の撮影だったのですが、素晴らしい演技であったためにそのシーンが映画内にて実際に使われていました! いろんなことにチャレンジしている木梨さんは、やはり役者としての演技力の高さも目立ちますね! 5.佐藤健さんと木梨憲武さん、撮影中は険悪ムード? C 2018「いぬやしき」製作委員会 C 奥浩哉/講談社 映画「いぬやしき」で主人公二人を演じた佐藤健さんと木梨憲武さん。 しかし木梨憲武さんが初めて撮影現場で佐藤さんに話しかけたとき、なかなか会話が続かなかったと言います。 そのことから「嫌われているのかな?」と感じたという木梨さんですが、実は佐藤健さんの行動には理由があったのです。 佐藤健さんは基本的に、撮影現場での待ち時間には静かに待っていることが多いと言います。 対する木梨さんは常に撮影現場の中で動きまわっていることが多かったようで、そのスタンスの違いがあまり話すきっかけにならなかったのだそうです。 佐藤健さんは比較的自然体に接していたと言いますが、その時は体づくりのために食事制限をしていました。 キャストさんたちと飲み会などに行くことが出来なかったそうなので、おそらくそれもひとつの理由であったのでしょう。 そしてクランクアップの時に、ようやく佐藤健さんも飲み会に参加することが出来たと言います。 その飲み会にて、木梨さんは初めて本当の佐藤健さんと対面することが出来たのでした。 6.伊勢谷友介さんと木梨憲武さんの意外な共通点 木梨憲武さんといえばお笑い芸人としてだけでなく、役者・ミュージシャン・アーティストなどの様々なジャンルで活躍されています。 そんな木梨さんと意外な共通点を持っていたのが、映画「いぬやしき」で獅子神を追う刑事役を演じた俳優の伊勢谷友介さんでした。 木梨さんはご自身の描いた絵で個展を開いていますが、実は伊勢谷さんもグループの一員としてニューヨークの展覧会に自身の作品を展示していたと言います。 そのときは着物やクッションなどのアート作品を手掛けたそうで、他にも様々な素材を使ってアート作品を作っているのだそうです。 伊勢谷さんは東京藝術大学に通っていたのですが、ある日を境に映画監督を目指すようになりました。 映画監督を一番近くで見れるのが俳優さんだと思ったことから、俳優への道を進み始めたのだと言います。 その後は見事に映画監督という夢を叶えることができ、2020年1月現在の時点で伊勢谷さんは2作品を手掛けていました。 アーティストや俳優などの様々なジャンルで活躍されているという点で、伊勢谷さんと木梨さんは共通していましたね。 7.みそ汁は本物? CG合成やVFXなどの技術をたくさん使用して制作された映画「いぬやしき」。 本作の中で主人公の犬屋敷壱郎が初めて自分の体が機械になっていることを知ったときに、腕の機械からみそ汁が吹き出るシーンがありました。 実はそのシーンの味噌汁は本物を素材として使用し、そこにCGなどを付け足すなどをしていた言います。 木梨憲武さんによると、現場の壁にわかめや味噌汁を貼っていたそうです。 (笑) 機械の体と同じく味噌汁もCGだと思っていたのですが、まさか本物の味噌汁を使用していたとは驚きですね! 【映画の裏側・裏話】「いぬやしき」木梨憲武さんが焼き鳥屋を開業?まとめ ということで今回は、映画「いぬやしき」の制作やキャストの裏側・裏話をお伝えしてきました。 主人公の犬屋敷壱郎を演じた、とんねるずの木梨憲武さんの自由で落ち着きのない性格が分かるような裏話が多くありましたね! 他にも三吉彩花さんの意外なノリの良さや佐藤健さんの少し冷たい性格など、キャスト陣の人間味もある裏話が多かったです。 漫画やアニメでも人気な『いぬやしき』、裏話を知ってうえで見るとまた違う楽しさがあるのではないでしょうか? 2020年2月現在の情報です。 詳しい情報は公式サイトでご確認ください。

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【映画の裏側・裏話】「いぬやしき」木梨憲武さんが焼き鳥屋を開業?

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あーあ、失敗したなぁ。 なんて、酒で溶けた脳で考えても今更すぎて仕方ない。 鼓膜に響く若者たちの喧騒が嫌というほど能伝わって、少しだけ気分が悪くなった。 柄にもなく大学の友達に誘われて飲み会へ参加したのがいけなかった。 特に今日、これといった用事も無かったため、なんとなく参加してみようと思ったのが、飲み会が始まってすぐに後悔した。 「ねぇねぇ江良ちゃん、飲んでる〜〜???」 「あっ、飲んでまーす」 グラスに入った氷をカラカラと鳴らしながら、あたしにしつこく絡む男へ割と素っ気ない態度を取る。 あたしが飲み会に来たことへ後悔した一番の理由がこの男だ。 すでに顔も真っ赤に染め上げ、酒臭い息であたしに絡むこの男は、同期の、所謂イケイケ系男子って感じ。 髪も明るく、ルックスもそこそこ良いこの男は、あたしとは正反対。 だというのに、さっきからこの男はあたしの側を離れようとしない。 「えー、全然飲んでないジャーン」 「いや飲んでますよ。 それにあたし、あんまりお酒に強くないし」 大方地雷コーデで固めたあたしに詰め寄ればワンチャンヤらせてくれると思っているのだろう。 さっきから目線が胸や尻を行ったり来たりしてるし。 ほら、メンヘラってやっぱ貞操観念が緩いから。 まぁあたしはメンヘラじゃないんだけど。 「ねぇねぇ、江良ちゃんって彼氏いんのー?」 ほら来た。 ワンナイトを望む男って、だいたい彼氏の有無とか聞いてくる気がする。 がっつり偏見だけど、多分この男はワンナイト狙ってるからあたしの偏見通りって感じ。 「まぁ、恋人は」 「えー、そーなのー?今日の飲み会彼氏さん知ってんのー?」 「まぁ、知ってますけど」 正確には彼氏、ではないんだけどね。 私の応えに「ふーん」と男はつまらなさそうな声を上げた。 あたしは結露でいっぱいのグラスを傾けた。 お酒の熱さが口内を満たし、氷の冷たさが熱さを中和する。 「ねぇねぇ江良ちゃん何飲んでんのー?」 「えっと、ピーチのやつ」 「えーっ!そんなのお酒じゃ無いよー!」 いや酒やし。 「ほらほら、丁度お酒無くなったみたいだし、俺飲んでるやつあげるよー」 なんて男はほざきながら、自身が持っていたグラスをあたしに押し付ける。 いややめろやめろやめろ。 お前さっきあたしがお酒に強く無いって言ったの忘れたのかよ。 脳味噌酒に溶け切ってついさっきのこと忘れてるとかまじでお前チンパンジー以下やんけ。 おい押し付けてくんなほんとにやめろ。 「いやいや、ちょ、やめ」 「良いから良いから」 なんも良く無いが!!? 「おっ?御伽原さんお酒飲めんの?」 「えっ、いやあたしは」 「飲めるってー!ほら江良ちゃん、一気一気」 新しく男の友達であろう別の男がやってきて、あたしにそんなことを聞いてくる。 あたしがそれに応える前に隣の男が返事をした。 その返事の内容に、あたしは目を見開いた。 「いやだから飲めないって」 「またまたー、ほら、早く飲んで飲んで」 男がかなりの声量で言うもんだから「なんだなんだ」と他のメンバーたちの目があたしに向かう。 「お?御伽原さんいける口なのー?」「良いじゃん良いじゃん!ほら一気一気!」「江良ちゃんの、ちょっと良いとこ見てみたい〜!」 騒々しい。 みんな酒に溺れ始めているせいで、変な空気がこの場を満たす。 ふと見れば、男のグラスに更にお酒が注がれていることに気が付き、男はそのグラスをあたしに押し付けた。 「ほら江良ちゃん!ここで飲まなきゃいつ飲むの!」 大学生特有の酒臭い空気はあたしを追い詰める。 渡されたグラスはなみなみお酒を注がれていて、冷たい結露があたしの冷や汗と混ざる。 ここで飲まないと空気悪くなるよな。 なんて、あたしらしくない思考に陥ったのも、きっとあたし自身酒に溺れかけているせい。 一杯くらいなら大丈夫、なんて考えが浮かんだ時点で、あたしはその場を離れるべきだったんだ。 あたしは手に持ったグラスを傾けて、ゴクリと喉を鳴らした。 喉の奥に熱さが流れ込み、甘くないお酒の味が口内に広がって、顔の熱さに拍車をかけていく。 先程飲んでいたお酒よりも格段に熱いお酒は、喉を鳴らすたびに脳を熱で溶かし、グラスが空になった頃にはグラリと平衡感覚を失っていた。 視界の隅で、男がニヤリと笑った気がした。 「おぉー!!!」「良い飲みっぷりー!」「さっすがー!」 周りの歓声が煩い。 一気に酒が回って体が言うことをいさきかない。 お酒弱い上に、もともと飲まないから余計に、だと思う。 目の当たりが熱くって、思考がグルグルする。 後頭部がとくとくと心拍音が聞こえる。 妙な息苦しさと気持ち悪さが這い寄ってきて、気分が悪い。 「あー、江良ちゃん大丈夫ー???」 「...... 大丈夫じゃない」 がっつり嫌味でそう返事をしたのに、ニヤついた男はさらに気持ち悪い笑みを浮かべ「そうかぁ」と言葉を溢した。 目に宿った獣のようにギラつく光にあたしは気付かない。 「じゃあ、江良ちゃんちょっと苦しそうだし、俺送って行くよ」...... あぁ、しくったなぁ。 ニヤついた男が吐くその言葉を聞いて、やっとあたしはこの男の魂胆に気がついた。 やっぱり最初からお持ち帰りする気バンバンだったじゃねえか。 予想通りだったよ!しかもやり口が卑怯すぎる。 女子を酒で酔わせてまぐわうセックスはそんなに気持ちがいいんか?っておい!腰触んじゃねぇ! 「ちょ、やめ」 「おー?お持ち帰りかー?ずりーぞー!」 「ははっ、バーカ!」 いや否定しないんかい! 腰に回された手はそのままぐらつくあたしを無理やり立たせて、出口の方へ歩かせる。 覚束ない足取りで無理やり歩かせるから今にも転けちゃいそう。 「んじゃとりま1万円置いて行くから、お釣りあったら返してなー」なんて男は言いながら、あたしを外へ連れ出した。 他のメンバーも出来上がっているのか、あたしたちを止めるものもいない。 外に出れば眩しい蛍光灯が目に刺さり、夏独特の心地よい夜風が火照った頬を覚ましていく。 「じゃあ、行こうか」 男はあたしの腰に手を回したまま歩き始める。 千鳥足のあたしには男の歩くスピードは結構早くて転びそうになる。 そういえば今日の飲み会のお金、あたし払ってないじゃん。 「いや、あたし、お金払ってない」 「あぁ、大丈夫大丈夫。 江良ちゃんの分も置いてきたから」 なんて男はサラリと言ってのけ、あたしを駅とは逆方向に連れて行く。 一瞬だけ「あれ?もしかしていい人かも?」とトゥクンしたけど別にあたしはチョロくないから。 「まぁその代わり、この後俺と遊ぼうよ」 あっ、やっぱりそうきたか。 どうりでホテル街へ足が運ばれるわけだよ。 「いやあの、今お金返せるんで」 「一回だけだから。 一回だけ。 俺いろんな人としてきたから彼氏よりも楽しい思いできると思うよ」 酒臭い息を吐きながら何言ってんだこいつは。 フラついた体でなんとか逃げようともがくけど、でもやっぱり相手は男性だから全く逃げられそうにない。 「いや!本当に結構なんで!恋人が待ってるんで」 「...... いいから。 行くぞ」 本性現したな獣め。 先ほどの口調とは一変して舌打ちをした男は乱暴にあたしをラブホへ連れて行く。 厚底の靴を履いてきたのと、酒で体がうまく回らないのが要因でほぼ引きずられる形。 引っ張られる腕は痛いし足も捻挫した時みたいな痛みが走って思わず顔をしかめる。 そんなあたしの様子はつゆ知らず、男はズンズンと歩みを進めるばかり。 あれ?もしかしてこれ本気でやばい感じ? 「やめ、離せって!」 「............ 」 猫被りの江良ちゃんは何処へやら。 口が悪くなったあたしには聞く耳持たずな男は、無言で先を急ぐばかり。 ネオン街に立ち並ぶ大人なお店たちがチラホラ視界に映り始めて、本格的に自身の貞操が危うくなり始める。 これはいけない、と全力で掴まれた腕を振り解こうとしても、びくともしなかった。 もうだめだ。 ごめんとこちゃん...... なんて泣きそうになりながら彼女の顔を思い浮かべた、その時。 「江良ちゃん?」 あたしの大好きな声が喧騒の中から聞こえてきて、あたしは思わず目を見開いた。 「とこ、ちゃ」 「ん?貴方は?」 あたしたちの行手を立ち塞がるように、あたしの恋人であるとこちゃんはあたしたちに話しかけた。 いつも頭にある耳は帽子で隠れ、尻尾も長いスカートの中に身を潜めている。 長い髪を二つ括りでまとめて、夏らしい衣装に身を包むとこちゃんは、側から見ても絶世の美女って感じ。 誰もが目を奪われるであろう彼女は、それでも夜の街に溶け込んでいてあたしと男以外には気付かれていないように感じる。 そんな綺麗すぎるあたしの恋人に微笑まれた男は、酒とはまた違う様子で顔を赤らめた。 「へ、へぇそうなんだ。 いやぁ、それにしてもめっちゃ戌亥さん美人っすね」 「えー?おおきにー。 お兄さんみたいな人に言われると嬉しいなぁ」 やっぱりにこやかな表情で男の言葉に返事をするとこちゃん。 返事も当たり障りがなくて非常に友好的。 さも男に気があるように見える。 そんな恋人の姿にムッとしないかって問われればそりゃするけど、それでも確かに抱いてしまった大きな安心感は拭うことができない。 「へへ。 えっと、急なんですけど戌亥さん、今ちょっと時間空いてません?」 「ん?空いてるけどどうしたん?」 「いやぁちょっと、今から俺と遊びません?」 「え?でも今お兄さん、江良ちゃんと遊んでるんちゃうの?」 「いやいやいや、彼女とはそんな。 駅まで送って行く途中だったんですよ!」 男はそう応えると、あたしの腰に回していた手を離し、とこちゃんの方へ近づいた。 急に支えがなくなったあたしは、そのままグラリと体が傾き、そのまま倒れそうになる。 だけどあたしの体は地面とぶつかる前に、柔らかなものに抱き寄せられ、そのまま大好きな匂いで満たされた。 「あっ、じゃあそう言うことなら江良ちゃん連れてもう帰りますー」 「へ?」 突如浮遊感を感じたと思ったら、気づけばあたしはとこちゃんにお姫様抱っこをされていた。 軽々とあたしを持ち上げ、爽やかな笑顔でそう言った彼女に、男は間抜けな声を上げた。 「え?いやちょっと!」 「江良ちゃん送ってくれてありがとうなー」 男の言葉はまるで聞こえてないみたいにとこちゃんはあたしを抱えたまま財布を取り出し中から一万円を出すと男に押し付けた(流石ケルベロス)。 お金を押し付けられた男は何がどうなっているのやら、なんて表情でぽかんとしていたが、すぐにあたしたちのそばへ寄る。 「いやいやいや、お金はいいから!ていうか女の子二人じゃ危ないから俺ついて行くよ!不審者でたら怖いしね!」 どこまでも食い下がる男にそろそろうざったく感じてきた頃、それはとこちゃんも同じだったのか先ほどのにこやかな表情とは一変して、彼女の冷徹で冷め切った目が男をぐさりと貫いた。 「それはあんたみたいな人のことか?」 「へ」 氷のように冷たい目線が男を突き刺し、怒りが含んだとこちゃんの言葉が男を武者震いさせる。 「何が駅まで送る、やねん。 がっつりホテル街の方行きよったやん。 嫌々な恋人持ちの女の子を酒で酔わして無理矢理ホテル連れ込もうとするとか最低やし、不審者以外の何者でもないやん」 あぁやっぱり、めっちゃ怒ってるなぁ。 流石地獄の住民と言わざるおえない。 圧倒的なプレッシャーは男に容赦なく降り注ぎ、否応なしに男は顔を真っ青にしてカチンコチンに固まってしまった。 それでもとこちゃんの怒りが収まることはない。 下から見るとこちゃんのギラついた瞳は宝石のようで、その綺麗さに思わずキュンとお腹の奥が熱くなった。 「あんた、次に江良ちゃんに近づいてみぃ、ただじゃおかんからな」 「ひっ...... な、なんでそんな」 「は?なんでって、そんなん」 ギラついて冷め切ったとこちゃんの目は、男からあたしに映る。 とこちゃんのあたしに向けられた目はどこまでも優しくって甘くって温かい。 愛おしむようにあたしを見つめるとこちゃんは、すぐに真剣な顔になって男を睨んだ。 「江良ちゃんはあたしのもんやからな」...... あぁ、やっぱりあたしはとこちゃんのことが大好きなんだなぁ。 とこちゃんは男に一方的に吐き捨てると、あたしを抱えてそのまま歩き始めた。 残された男は一人茫然と立ち竦んでいて、もうこちらに来る様子もない。 ズンズンと確かな歩みであたしを運ぶとこちゃんは、どこか不機嫌そうだった。 だからあたし、飲み会には反対やってん」 「...... 迷惑かけてごめん」 「............ 迷惑とか、そんなんじゃなくて」 抱えたまま、とこちゃんはあたしの顔を見た。 顔をくしゃりと歪め、稲妻色と夕焼け色の瞳は不安でユラユラと揺れていた。 「江良ちゃんはもっと、自分の可愛さに自覚を持った方がええ」 「へ?」 「こっちは、江良ちゃんがいつとられるか、ヒヤヒヤして警戒しとんのに、当の本人がこれじゃ意味ないやん」 「と、とられないよ」 「さっきまでラブホ連れ込まれそうになってたのによく言うわ」 とこちゃん、そんなこと思ってたんだ。 あぁ、不安にさせちゃってたんだ。 そんな不安しなくても、あたしにはとこちゃんしかいないのに。 でも、とこちゃんがいうようにさっきまで連れ込まれそうになってたあたしが言えることじゃないけど。 不機嫌そうに、不安そうにこちらを見るとこちゃん。 その姿はまるで小さな小さな子供のよう。 とこちゃんの独占欲の強さはなんとなくわかってたけど、でもやっぱりこういう姿は少し新鮮で、本人もわかってるのかこんな姿を見せて嫌われてないか怖がってるんだと思う。 とこちゃんを嫌うなんて、あるわけないし、更に言うといつもさっぱりとした彼女が、胸の内じゃそんな可愛らしいこと考えてたって知ったらもっと好きになっちゃったし。 帽子に隠れた耳がペタンと倒れ、スカートで隠れた尻尾がシュンと垂れ下がってる光景が崩れた脳でも優に想像できて、そんな自分にあたしはくすりと笑った。 「ごめんね、とこちゃん。 これからは気をつけるから」 「...... うん」 「だから、そんな不安そうな顔しないで。 あたしにはとこちゃんしか居ないんだから」 なんて笑いながらびっくり顔のとこちゃんの頰を撫でた。 あたしとは違ってひんやりとするとこちゃんの頬はスベスベもちもちで気持ちが良い。 とこちゃんのほっぺの気持ち良さを堪能していたら、次第にびっくり顔のとこちゃんは息を潜め、気持ちよさそうに目を細めるとこちゃんが現れた。 そしてスリスリと頬擦りをしてきた。 なにそれ、可愛すぎる。 頭に残る熱さが、お酒のせいなのかわからなくなってきたあたしは、大好きな恋人のそんな姿に胸が苦しくなるばかり。 あたしがピンチの時にいつでも駆けつけてくれる、あたしの、あたしだけの王子様。 いつもそっけないくせして、ピンチの時は頼りになるかっこいい姿を見せてくる。 二人きりの時は子犬みたいに甘えてくる。 カッコ良くて、可愛くて、美人で、とっても優しいあたしの彼女。 あたしなんかがとこちゃんの恋人でいいのかなって思う時もあるけど、それでもとこちゃんを他の奴になんか渡したりしないもんね。 絶対離してやらないもんね。 「いつもありがとう、とこちゃん」 「ぇん」 あたしがそういえば、とこちゃんは屈託ない笑顔で元気よく頷いた。 やっぱりいぬいどんどんすきになるって、彼女のことを的を射た言葉なんだなってわかるよね。 だって実際、彼女と過ごすたびにどんどん彼女のことが好きになるんだから。 「ねっ、とこちゃん」 「ん?なに?」 優しい笑みであたしのことを見つめる愛おしい恋人に、あたしはおんなじくらい優しさを込めて笑い、ゆっくりと口を開いた。 「なんでホテルの方に行こうとしてるの?」 駅とは真反対を突き進むとこちゃんに、あたしはニコニコ顔のまま優しく問いかけた。 優しくて、だけど獣みたいにギラつく瞳で見据えられてしまったら期待するに決まってるよ。 とこちゃんの嗅覚じゃお酒の匂いがかなりキツいと思うけど、我慢してね。 ジュンと濡れる感覚を覚えながら、あたしは静かに崩れた脳でそう呟いた。 酒臭い微睡の夜は、もう少し続くようだった。

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んじゅ…? ごはん… [ニコニコあっぷる]

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あーあ、失敗したなぁ。 なんて、酒で溶けた脳で考えても今更すぎて仕方ない。 鼓膜に響く若者たちの喧騒が嫌というほど能伝わって、少しだけ気分が悪くなった。 柄にもなく大学の友達に誘われて飲み会へ参加したのがいけなかった。 特に今日、これといった用事も無かったため、なんとなく参加してみようと思ったのが、飲み会が始まってすぐに後悔した。 「ねぇねぇ江良ちゃん、飲んでる〜〜???」 「あっ、飲んでまーす」 グラスに入った氷をカラカラと鳴らしながら、あたしにしつこく絡む男へ割と素っ気ない態度を取る。 あたしが飲み会に来たことへ後悔した一番の理由がこの男だ。 すでに顔も真っ赤に染め上げ、酒臭い息であたしに絡むこの男は、同期の、所謂イケイケ系男子って感じ。 髪も明るく、ルックスもそこそこ良いこの男は、あたしとは正反対。 だというのに、さっきからこの男はあたしの側を離れようとしない。 「えー、全然飲んでないジャーン」 「いや飲んでますよ。 それにあたし、あんまりお酒に強くないし」 大方地雷コーデで固めたあたしに詰め寄ればワンチャンヤらせてくれると思っているのだろう。 さっきから目線が胸や尻を行ったり来たりしてるし。 ほら、メンヘラってやっぱ貞操観念が緩いから。 まぁあたしはメンヘラじゃないんだけど。 「ねぇねぇ、江良ちゃんって彼氏いんのー?」 ほら来た。 ワンナイトを望む男って、だいたい彼氏の有無とか聞いてくる気がする。 がっつり偏見だけど、多分この男はワンナイト狙ってるからあたしの偏見通りって感じ。 「まぁ、恋人は」 「えー、そーなのー?今日の飲み会彼氏さん知ってんのー?」 「まぁ、知ってますけど」 正確には彼氏、ではないんだけどね。 私の応えに「ふーん」と男はつまらなさそうな声を上げた。 あたしは結露でいっぱいのグラスを傾けた。 お酒の熱さが口内を満たし、氷の冷たさが熱さを中和する。 「ねぇねぇ江良ちゃん何飲んでんのー?」 「えっと、ピーチのやつ」 「えーっ!そんなのお酒じゃ無いよー!」 いや酒やし。 「ほらほら、丁度お酒無くなったみたいだし、俺飲んでるやつあげるよー」 なんて男はほざきながら、自身が持っていたグラスをあたしに押し付ける。 いややめろやめろやめろ。 お前さっきあたしがお酒に強く無いって言ったの忘れたのかよ。 脳味噌酒に溶け切ってついさっきのこと忘れてるとかまじでお前チンパンジー以下やんけ。 おい押し付けてくんなほんとにやめろ。 「いやいや、ちょ、やめ」 「良いから良いから」 なんも良く無いが!!? 「おっ?御伽原さんお酒飲めんの?」 「えっ、いやあたしは」 「飲めるってー!ほら江良ちゃん、一気一気」 新しく男の友達であろう別の男がやってきて、あたしにそんなことを聞いてくる。 あたしがそれに応える前に隣の男が返事をした。 その返事の内容に、あたしは目を見開いた。 「いやだから飲めないって」 「またまたー、ほら、早く飲んで飲んで」 男がかなりの声量で言うもんだから「なんだなんだ」と他のメンバーたちの目があたしに向かう。 「お?御伽原さんいける口なのー?」「良いじゃん良いじゃん!ほら一気一気!」「江良ちゃんの、ちょっと良いとこ見てみたい〜!」 騒々しい。 みんな酒に溺れ始めているせいで、変な空気がこの場を満たす。 ふと見れば、男のグラスに更にお酒が注がれていることに気が付き、男はそのグラスをあたしに押し付けた。 「ほら江良ちゃん!ここで飲まなきゃいつ飲むの!」 大学生特有の酒臭い空気はあたしを追い詰める。 渡されたグラスはなみなみお酒を注がれていて、冷たい結露があたしの冷や汗と混ざる。 ここで飲まないと空気悪くなるよな。 なんて、あたしらしくない思考に陥ったのも、きっとあたし自身酒に溺れかけているせい。 一杯くらいなら大丈夫、なんて考えが浮かんだ時点で、あたしはその場を離れるべきだったんだ。 あたしは手に持ったグラスを傾けて、ゴクリと喉を鳴らした。 喉の奥に熱さが流れ込み、甘くないお酒の味が口内に広がって、顔の熱さに拍車をかけていく。 先程飲んでいたお酒よりも格段に熱いお酒は、喉を鳴らすたびに脳を熱で溶かし、グラスが空になった頃にはグラリと平衡感覚を失っていた。 視界の隅で、男がニヤリと笑った気がした。 「おぉー!!!」「良い飲みっぷりー!」「さっすがー!」 周りの歓声が煩い。 一気に酒が回って体が言うことをいさきかない。 お酒弱い上に、もともと飲まないから余計に、だと思う。 目の当たりが熱くって、思考がグルグルする。 後頭部がとくとくと心拍音が聞こえる。 妙な息苦しさと気持ち悪さが這い寄ってきて、気分が悪い。 「あー、江良ちゃん大丈夫ー???」 「...... 大丈夫じゃない」 がっつり嫌味でそう返事をしたのに、ニヤついた男はさらに気持ち悪い笑みを浮かべ「そうかぁ」と言葉を溢した。 目に宿った獣のようにギラつく光にあたしは気付かない。 「じゃあ、江良ちゃんちょっと苦しそうだし、俺送って行くよ」...... あぁ、しくったなぁ。 ニヤついた男が吐くその言葉を聞いて、やっとあたしはこの男の魂胆に気がついた。 やっぱり最初からお持ち帰りする気バンバンだったじゃねえか。 予想通りだったよ!しかもやり口が卑怯すぎる。 女子を酒で酔わせてまぐわうセックスはそんなに気持ちがいいんか?っておい!腰触んじゃねぇ! 「ちょ、やめ」 「おー?お持ち帰りかー?ずりーぞー!」 「ははっ、バーカ!」 いや否定しないんかい! 腰に回された手はそのままぐらつくあたしを無理やり立たせて、出口の方へ歩かせる。 覚束ない足取りで無理やり歩かせるから今にも転けちゃいそう。 「んじゃとりま1万円置いて行くから、お釣りあったら返してなー」なんて男は言いながら、あたしを外へ連れ出した。 他のメンバーも出来上がっているのか、あたしたちを止めるものもいない。 外に出れば眩しい蛍光灯が目に刺さり、夏独特の心地よい夜風が火照った頬を覚ましていく。 「じゃあ、行こうか」 男はあたしの腰に手を回したまま歩き始める。 千鳥足のあたしには男の歩くスピードは結構早くて転びそうになる。 そういえば今日の飲み会のお金、あたし払ってないじゃん。 「いや、あたし、お金払ってない」 「あぁ、大丈夫大丈夫。 江良ちゃんの分も置いてきたから」 なんて男はサラリと言ってのけ、あたしを駅とは逆方向に連れて行く。 一瞬だけ「あれ?もしかしていい人かも?」とトゥクンしたけど別にあたしはチョロくないから。 「まぁその代わり、この後俺と遊ぼうよ」 あっ、やっぱりそうきたか。 どうりでホテル街へ足が運ばれるわけだよ。 「いやあの、今お金返せるんで」 「一回だけだから。 一回だけ。 俺いろんな人としてきたから彼氏よりも楽しい思いできると思うよ」 酒臭い息を吐きながら何言ってんだこいつは。 フラついた体でなんとか逃げようともがくけど、でもやっぱり相手は男性だから全く逃げられそうにない。 「いや!本当に結構なんで!恋人が待ってるんで」 「...... いいから。 行くぞ」 本性現したな獣め。 先ほどの口調とは一変して舌打ちをした男は乱暴にあたしをラブホへ連れて行く。 厚底の靴を履いてきたのと、酒で体がうまく回らないのが要因でほぼ引きずられる形。 引っ張られる腕は痛いし足も捻挫した時みたいな痛みが走って思わず顔をしかめる。 そんなあたしの様子はつゆ知らず、男はズンズンと歩みを進めるばかり。 あれ?もしかしてこれ本気でやばい感じ? 「やめ、離せって!」 「............ 」 猫被りの江良ちゃんは何処へやら。 口が悪くなったあたしには聞く耳持たずな男は、無言で先を急ぐばかり。 ネオン街に立ち並ぶ大人なお店たちがチラホラ視界に映り始めて、本格的に自身の貞操が危うくなり始める。 これはいけない、と全力で掴まれた腕を振り解こうとしても、びくともしなかった。 もうだめだ。 ごめんとこちゃん...... なんて泣きそうになりながら彼女の顔を思い浮かべた、その時。 「江良ちゃん?」 あたしの大好きな声が喧騒の中から聞こえてきて、あたしは思わず目を見開いた。 「とこ、ちゃ」 「ん?貴方は?」 あたしたちの行手を立ち塞がるように、あたしの恋人であるとこちゃんはあたしたちに話しかけた。 いつも頭にある耳は帽子で隠れ、尻尾も長いスカートの中に身を潜めている。 長い髪を二つ括りでまとめて、夏らしい衣装に身を包むとこちゃんは、側から見ても絶世の美女って感じ。 誰もが目を奪われるであろう彼女は、それでも夜の街に溶け込んでいてあたしと男以外には気付かれていないように感じる。 そんな綺麗すぎるあたしの恋人に微笑まれた男は、酒とはまた違う様子で顔を赤らめた。 「へ、へぇそうなんだ。 いやぁ、それにしてもめっちゃ戌亥さん美人っすね」 「えー?おおきにー。 お兄さんみたいな人に言われると嬉しいなぁ」 やっぱりにこやかな表情で男の言葉に返事をするとこちゃん。 返事も当たり障りがなくて非常に友好的。 さも男に気があるように見える。 そんな恋人の姿にムッとしないかって問われればそりゃするけど、それでも確かに抱いてしまった大きな安心感は拭うことができない。 「へへ。 えっと、急なんですけど戌亥さん、今ちょっと時間空いてません?」 「ん?空いてるけどどうしたん?」 「いやぁちょっと、今から俺と遊びません?」 「え?でも今お兄さん、江良ちゃんと遊んでるんちゃうの?」 「いやいやいや、彼女とはそんな。 駅まで送って行く途中だったんですよ!」 男はそう応えると、あたしの腰に回していた手を離し、とこちゃんの方へ近づいた。 急に支えがなくなったあたしは、そのままグラリと体が傾き、そのまま倒れそうになる。 だけどあたしの体は地面とぶつかる前に、柔らかなものに抱き寄せられ、そのまま大好きな匂いで満たされた。 「あっ、じゃあそう言うことなら江良ちゃん連れてもう帰りますー」 「へ?」 突如浮遊感を感じたと思ったら、気づけばあたしはとこちゃんにお姫様抱っこをされていた。 軽々とあたしを持ち上げ、爽やかな笑顔でそう言った彼女に、男は間抜けな声を上げた。 「え?いやちょっと!」 「江良ちゃん送ってくれてありがとうなー」 男の言葉はまるで聞こえてないみたいにとこちゃんはあたしを抱えたまま財布を取り出し中から一万円を出すと男に押し付けた(流石ケルベロス)。 お金を押し付けられた男は何がどうなっているのやら、なんて表情でぽかんとしていたが、すぐにあたしたちのそばへ寄る。 「いやいやいや、お金はいいから!ていうか女の子二人じゃ危ないから俺ついて行くよ!不審者でたら怖いしね!」 どこまでも食い下がる男にそろそろうざったく感じてきた頃、それはとこちゃんも同じだったのか先ほどのにこやかな表情とは一変して、彼女の冷徹で冷め切った目が男をぐさりと貫いた。 「それはあんたみたいな人のことか?」 「へ」 氷のように冷たい目線が男を突き刺し、怒りが含んだとこちゃんの言葉が男を武者震いさせる。 「何が駅まで送る、やねん。 がっつりホテル街の方行きよったやん。 嫌々な恋人持ちの女の子を酒で酔わして無理矢理ホテル連れ込もうとするとか最低やし、不審者以外の何者でもないやん」 あぁやっぱり、めっちゃ怒ってるなぁ。 流石地獄の住民と言わざるおえない。 圧倒的なプレッシャーは男に容赦なく降り注ぎ、否応なしに男は顔を真っ青にしてカチンコチンに固まってしまった。 それでもとこちゃんの怒りが収まることはない。 下から見るとこちゃんのギラついた瞳は宝石のようで、その綺麗さに思わずキュンとお腹の奥が熱くなった。 「あんた、次に江良ちゃんに近づいてみぃ、ただじゃおかんからな」 「ひっ...... な、なんでそんな」 「は?なんでって、そんなん」 ギラついて冷め切ったとこちゃんの目は、男からあたしに映る。 とこちゃんのあたしに向けられた目はどこまでも優しくって甘くって温かい。 愛おしむようにあたしを見つめるとこちゃんは、すぐに真剣な顔になって男を睨んだ。 「江良ちゃんはあたしのもんやからな」...... あぁ、やっぱりあたしはとこちゃんのことが大好きなんだなぁ。 とこちゃんは男に一方的に吐き捨てると、あたしを抱えてそのまま歩き始めた。 残された男は一人茫然と立ち竦んでいて、もうこちらに来る様子もない。 ズンズンと確かな歩みであたしを運ぶとこちゃんは、どこか不機嫌そうだった。 だからあたし、飲み会には反対やってん」 「...... 迷惑かけてごめん」 「............ 迷惑とか、そんなんじゃなくて」 抱えたまま、とこちゃんはあたしの顔を見た。 顔をくしゃりと歪め、稲妻色と夕焼け色の瞳は不安でユラユラと揺れていた。 「江良ちゃんはもっと、自分の可愛さに自覚を持った方がええ」 「へ?」 「こっちは、江良ちゃんがいつとられるか、ヒヤヒヤして警戒しとんのに、当の本人がこれじゃ意味ないやん」 「と、とられないよ」 「さっきまでラブホ連れ込まれそうになってたのによく言うわ」 とこちゃん、そんなこと思ってたんだ。 あぁ、不安にさせちゃってたんだ。 そんな不安しなくても、あたしにはとこちゃんしかいないのに。 でも、とこちゃんがいうようにさっきまで連れ込まれそうになってたあたしが言えることじゃないけど。 不機嫌そうに、不安そうにこちらを見るとこちゃん。 その姿はまるで小さな小さな子供のよう。 とこちゃんの独占欲の強さはなんとなくわかってたけど、でもやっぱりこういう姿は少し新鮮で、本人もわかってるのかこんな姿を見せて嫌われてないか怖がってるんだと思う。 とこちゃんを嫌うなんて、あるわけないし、更に言うといつもさっぱりとした彼女が、胸の内じゃそんな可愛らしいこと考えてたって知ったらもっと好きになっちゃったし。 帽子に隠れた耳がペタンと倒れ、スカートで隠れた尻尾がシュンと垂れ下がってる光景が崩れた脳でも優に想像できて、そんな自分にあたしはくすりと笑った。 「ごめんね、とこちゃん。 これからは気をつけるから」 「...... うん」 「だから、そんな不安そうな顔しないで。 あたしにはとこちゃんしか居ないんだから」 なんて笑いながらびっくり顔のとこちゃんの頰を撫でた。 あたしとは違ってひんやりとするとこちゃんの頬はスベスベもちもちで気持ちが良い。 とこちゃんのほっぺの気持ち良さを堪能していたら、次第にびっくり顔のとこちゃんは息を潜め、気持ちよさそうに目を細めるとこちゃんが現れた。 そしてスリスリと頬擦りをしてきた。 なにそれ、可愛すぎる。 頭に残る熱さが、お酒のせいなのかわからなくなってきたあたしは、大好きな恋人のそんな姿に胸が苦しくなるばかり。 あたしがピンチの時にいつでも駆けつけてくれる、あたしの、あたしだけの王子様。 いつもそっけないくせして、ピンチの時は頼りになるかっこいい姿を見せてくる。 二人きりの時は子犬みたいに甘えてくる。 カッコ良くて、可愛くて、美人で、とっても優しいあたしの彼女。 あたしなんかがとこちゃんの恋人でいいのかなって思う時もあるけど、それでもとこちゃんを他の奴になんか渡したりしないもんね。 絶対離してやらないもんね。 「いつもありがとう、とこちゃん」 「ぇん」 あたしがそういえば、とこちゃんは屈託ない笑顔で元気よく頷いた。 やっぱりいぬいどんどんすきになるって、彼女のことを的を射た言葉なんだなってわかるよね。 だって実際、彼女と過ごすたびにどんどん彼女のことが好きになるんだから。 「ねっ、とこちゃん」 「ん?なに?」 優しい笑みであたしのことを見つめる愛おしい恋人に、あたしはおんなじくらい優しさを込めて笑い、ゆっくりと口を開いた。 「なんでホテルの方に行こうとしてるの?」 駅とは真反対を突き進むとこちゃんに、あたしはニコニコ顔のまま優しく問いかけた。 優しくて、だけど獣みたいにギラつく瞳で見据えられてしまったら期待するに決まってるよ。 とこちゃんの嗅覚じゃお酒の匂いがかなりキツいと思うけど、我慢してね。 ジュンと濡れる感覚を覚えながら、あたしは静かに崩れた脳でそう呟いた。 酒臭い微睡の夜は、もう少し続くようだった。

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